法務省によれば、2017年に日本国内で就職した外国人留学生の数は2万2419人に達し、過去最高を記録した。前年と比べて2984人、12年からの5年間では2倍以上の増加である。
政府は早ければ来年度から留学生の就職条件を大幅に緩和する方針を打ち出している。これまでは大学や専門学校で専攻した分野に近い仕事にしか就けなかったが、大学の卒業生には職種を限定せず就職が認められる。専門学校を卒業した場合も、「クールジャパン」に関連する就職であれば専攻が問われなくなる。日本で就職する留学生は今後、これまで以上に急増する可能性がある。
留学生がいったん就職して就労ビザを得れば、その更新は難しくない。つまり、就職によって実質「移民」となる権利も得るわけだ。安倍政権は「移民政策は取らない」との態度を崩していないが、留学生の就職増加という事実だけ見ても、日本は「移民国家」への道を確実に歩んでいる。
「移民」にはアレルギーが強い日本人の間でも、増加する留学生の就職について異を唱える声はほとんどない。日本語や日本の文化に親しんだ外国人が、企業の国際化に貢献してくれるというイメージでとらえられるからだ。しかし、留学生の受け入れ現場を長く取材している筆者は、現状の危うさを指摘せずにはいられない。
留学生に対する就職条件の緩和
そもそも、なぜ政府は留学生の日本での就職を増やしたいのか。その背景には、安倍政権が留学生の就職増加を「成長戦略」に掲げている事情がある。
政府がしばしば引用し、新聞でも頻繁に報じるデータがある。独立行政法人「日本学生支援機構」が2015年度に行った調査で、留学生の「64パーセント」が日本での就職を望みながら、実際に職を得ているのは「35パーセント」というものだ。
このデータをもとに、安倍政権は16年に発表した「日本再興戦略」(成長戦略)で留学生の就職率を「5割」に引き上げることを目標に掲げた。しかし、「5割」はかなり高いハードルだ。現状のように留学生の就職先を限定していてはクリアが難しい。そこで条件を緩和しようというのである。留学生に対する就職条件の緩和というニュースは、9月6日の全国紙朝刊で一斉に報じられた。
<大学・大学院を卒業・修了した留学生のうち国内で就職するのは3割にとどまり、見直しにより、優秀な外国人材の定着促進を図るのが狙い>(毎日新聞)
<法務省は「日本の大学を卒業した優秀な外国人材の国内定着の促進や、海外での日本文化の発信・普及につながる」としている>(産経新聞)
こうした具合に、各紙とも政策を発表した法務省の主張を伝えるだけで、批判的な解説はまったく見られない。政策に込められた真意が理解できていないのだ。