経済界の強い要請
就職緩和策が実現すれば、大卒の場合は「年収300万円以上」と「日本語を使う仕事」を条件にいかなる仕事にも就ける。これは政策の大転換を意味している。留学生の就職先として認められていなかった「単純労働」でも、就労ビザが取得できるようになる。
昨年、日本で就職した留学生の91.4パーセントが取得したのが「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)という在留資格だった。技術者を含め、ホワイトカラーに限った資格である。このビザでは、工場での肉体労働や飲食チェーンの店頭での仕事といった「単純労働」には従事できない。そこで政府は、外国人に対して法務大臣が独自に定める在留資格「特定活動」の範囲を拡大する見通しだ。そうすれば、単純労働の仕事に就くことも可能となる。
人手不足が深刻化し、外国人の働き手をもっとも欲しているのは、ほかならぬ単純労働の現場である。中小企業の工場、介護、建設といった現場では、人手不足解消の手段として「実習生」として外国人労働者が受け入れられている。しかし、実習生だけでは人手不足は解消していない。そんな職種にも、今後は留学生が就職できるわけだ。
留学生の就職緩和策が実現した背景には、安価な労働力を求める産業界の声があるのは間違いない。今年2月に開かれた自民党「外国人労働者等特別委員会」でも、日本商工会議所から日本の「大学等を卒業した外国人留学生」に特化した在留資格を創設するよう働きかけがあった。そんな声に応えるかたちで、与党・自民党が政策の実現に動いたのだろう。
しかし、大学や専門学校を卒業した留学生は、本当に法務省の言うような「優秀な外国人材」なのだろうか。また、彼らは日本が移民として迎えるべき外国人なのか。そしてなぜ、このタイミングで留学生の就職条件が緩和されるのか。
(文=出井康博/ジャーナリスト)
※後編に続く