牛丼チェーン・すき家のアルバイト従業員が、店内で撮影した不適切な動画をインターネット上に投稿し、大きな話題を呼んでいる。
数年前から、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に、バイト先などで悪ふざけをする動画を上げる行為は後を絶たない。だが、飲食店の冷蔵庫に入ったり、コンビニエンスストアの冷凍ケースに入るといった行為の末に、莫大な損害賠償を請求される例が相次ぎ、最近はネット上で激しく炎上するような動画が上げられることは減っているように見える。
だが、今回は「やばい、絶対クビ(になる)」と笑いながら店内に氷を投げたり、調理器具の「おたま」を股間に当てるといった姿を撮影している。さらに、動画の中央には「くびかくご」との文字を出しており、「多少怒られてもいいや」というノリで作成したように見受けられる。
問題の動画は、24時間で消える機能を使って投稿されたが、瞬く間にネット上に広まった。それを受けて、すき家の運営元であるゼンショーがおわびの文書を出すとともに、動画を撮影した人物と動画に映っていた人物2人が同店のアルバイト従業員であることを明かし、処分する方針であることを発表した。
このように企業活動に迷惑をかける行為に対しては、当該企業が受けた損害を算定して賠償請求することが想定されるが、刑事事件になることはないのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士は、刑事事件として処罰すべきだと主張する。
「こういうアホは、見せしめに逮捕・起訴されるべきです。もっとも、実際には、他人の業務を妨害することを罰する『業務妨害罪』(3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑。刑法233条)の成立は難しいところです。具体的に、『飲食物を提供する』という、すき家の業務が威力やトリックなどで妨害されたとまでは、なかなかいえないからです。
しかし、もう少し“軽めの”犯罪、すなわち軽犯罪法1条31号は『他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者』について、『拘留(1日以上30日未満の拘束刑)』『科料(1000円以上1万円以下の財産刑)』を科しています。
今回は、どう考えても『悪戯』で、すき家の正当な業務を妨害しているでしょうから、軽犯罪法違反として処罰されるべきです。
また、民事事件としても、当該店舗の売上が低下したり、フランチャイズ本部との契約を解除されたりした場合には、当該店舗の『得べかりし利益(本来、得ることができた利益)』が損害額となることでしょう。
この手の問題は、一度“みせしめ”で厳しく処罰し、かつ損害賠償責任を負わせることが肝要です」(山岸純弁護士)
注目を浴びたいがために、他人に迷惑をかける行為を平気で行う非常識な人物には、厳しい処罰を与えて猛省を促すことが必要だろう。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)