景気動向指数(一致系列)は、生産指数、有効求人倍率など9系列を採用し、これらから機械的に算出している。景気の動きを素直に客観的にみるにはいい指標だ。しかし、このデータを使う政府(内閣府)には、不純な気持ちがないとはいえない。内閣府の景気動向指数研究会(座長・吉川洋立正大教授)は2012年12月から続く景気拡大期間が今なお続いていると判定しているが、筆者としては異論がある。
正直にいって、景気動向指数(一致指数。15年=100)のデータを素直に見る限り、14年4月の消費増税の悪影響はその前後ではっきり出ており、そこに景気の「山」があり、16年5月あたりで「谷」があるように見える。
問題なのは、14年4月の消費増税によって景気が後退したかどうかだ。景気動向指数をみると、14年3月に105.7とピークになり、その後ゆっくり低下し、2016年5月98.0が底だ。しかし、そこらは景気の「山」や「谷」と判定されずに、景気拡大が続いていたというのが、同研究会の判断である。
消費増税後の悪影響により景気が後退したとの見方について、同研究会はこれまで否定してきている。そのロジックは、12年11月の谷以降、明確に「山」が見つからないというものだ。しかし、筆者の目には14年3月が「山」であるように見える。同研究会座長は、消費増税しても景気への影響が軽微だと、消費増税前に発言した。それは結果として間違いだったが、そのために、その後の同研究会の意見が左右されたようにも思われる。さらに、14年4月の消費増税によって景気後退したことを認めたら、二度と消費増税できないからということで、頑として認めないようにも見える。
消費増税が景気の腰を折ったのは事実であるが、いずれにしても、その後、16年5月あたりで「谷」となって、17年12月あたりがまた「山」となり、現時点では下降中と考えるのが自然であろう。
景気後退+外的ショック
中国経済要因は確かにあるが、17年12月あたりがピークでそれ以降下降している。これは、マクロ経済政策の効果ラグ(半年~1年半程度)を考慮すると、16年9月のイールドカーブコントロールによる金融引き締めの結果とも読める。それに最近の中国経済不振で、対中輸出激減の要因が加味されたとみるほうがいいだろう。
国内要因で景気が落ち目になった時の外的ショックは、下り坂で押されるのと同じで、つるべ落としのように大きく景気が落ち込む悪影響になるので要注意だ。
16年5月に伊勢志摩サミットがあった。その時、17年4月から消費増税が予定されていたが、リーマンショック級の経済変動があり得るとして、消費増税を見送った。リーマンショック級というなら、今回のほうが起こる確率は高い。その候補として、前述の中国、英国に加えて日本も挙げておこう。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)