2015年の六代目山口組分裂後、神戸山口組が内外にその存在感を印象付けた行動があった。「練り歩き」といわれる、勢力を誇示するために徒党を組んで街中を歩く示威的行為だ。当時、その陣頭指揮を執ったのが、現在、任侠山口組で代表を務めている織田絆誠代表(元神戸山口組若頭代行)だった。織田代表は分裂直後から神戸山口組にとって敵地と目されていた名古屋を皮切りに、北は北海道、南は九州まで出向き、配下の組員を大勢引き連れて、街中で練り歩きを繰り返してみせたのだ。
「分裂以前から、関西では織田代表の名前は轟いていたという話ですが、こうしたデモンストレーションを繰り返し、彼の名は全国区になっていったといわれています」(ジャーナリスト)
その後、自治体によっては、こうした示威的行為が条例違反にあたるとして、組員が逮捕されるケースもあり、次第に練り歩き行為も沈静化されていくのだが、ここにきて突如、大阪市内で示威的行為が活発化してきている。
「先日、大阪ミナミで六代目山口組の複数の二次団体が集結してみせたかと思うと、数日後には今度は神戸山口組系の組員らが大勢でミナミにやってきて、警察官が出動する事態となりました」(地元関係者)
そして3月24日には、大阪市西成区で神戸山口組の関係者と見られる組員らが大勢集まり、示威的行為を行って存在感をアピールしてみせたのだ。その動画は瞬く間にSNSによって拡散され、業界関係者の中で話題を呼ぶことになる。
「50人ほどが黄色のテープのようなものを腕などに貼り、示威的行為をしてみせた。黄色の印をつけていた理由は、仮に突発的な衝突などが生じた際、敵と味方を間違えないようにするための対策ではないか。練り歩きの名目は、蔓延する覚醒剤の撲滅を呼びかけての地回りということらしいが、実際のところ六代目山口組サイドに対する牽制の意味合いが含まれているのだろう」(捜査関係者)
捜査関係者によると、神戸山口組が意識している牽制先とは、今もっとも勢力を拡大している六代目山口組傘下の三代目弘道会野内組だという。
「五代目山口組時代、西成といえば最強の4次団体といわれ一世を風靡した三島組の存在が大きかったのだが、その三島組で幹部を務めていた組長らが昨年、任侠山口組から野内組に移籍し、関西ヤクザの勢力図に大きな楔を打ち込むことになった。それに対して、神戸山口組サイドが派手なパフォーマンスで牽制してみせたということだろう」(業界関係者)
対する野内組の対応も早かった。神戸山口組サイドが示威的行為を行った2日後には、岐阜県に本拠地を置く野内組から、舞台となった西成に大勢の組員が派遣されることになっていくのである。業界関係者の間でも、一触即発の事態になるのではないかと危惧されたが、幸いにもその後、両組織による衝突があった形跡はない。
だが、突発的な衝突が仮に大阪府内で起きてしまった場合、六代目山口組、神戸山口組の両サイドから大勢の組員が派遣される体制が整っていることが、あらためて知らされることになったともいえる。そして、業界関係者の間で盃事などの組織改革が行われると噂される任侠山口組の存在。山口組の分裂騒動は、さまざま攻防を水面下で展開しながら、今もなお続いている。
(文=沖田臥竜/作家)
●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。