NHKは、これらの事実を覆い隠す報道を行い、森友問題では名指しで野党を批判した。統計不正問題の報道では、小川議員の発言の要約すら欠落させ、国民の疑問の声をバックにした鋭い政権批判を削ってしまった。議長の進行発言なども組み合わせ、自民党議員の「反対のための反対でしかない」という発言を挿入し、大きく脚色して「白」を「黒」に変えてしまった。組織的な悪意がなければ実現できない放送であり、公共放送による異なる意見を抹殺する放送テロといってもいい過ぎでない酷さであった。
いずれも放送法第4条の目的、公正な報道、異なる意見の多角的な報道、事実に基づく報道に違反する放送であり、現政権を批判する野党への傍若無人とでもいうような中傷報道である。先の市民団体は、提出した苦情処理で、放送法第7条に基づき、訂正放送を行わせるとともに、責任を問い謝罪を求めているが、その返答が注目される。
以下、森友問題をめぐるNHKの放送の背景に大きく切り込みたい。
NHKが依拠した民間事業者は、森友背任事件の陰の主役?
NHKの報道(※1)は、なぜ野党議員8名が森友問題の真相を解明するために大阪に出張し(1月17日)、藤原工業に説明を求めたのかという点に関する説明さえない。そしてNHKが野党批判に利用した藤原工業は、森友問題の核心である国有地売却における値引きに大きく関与した事業者であった。
藤原工業は今年3月6日、初公判が開かれた森友学園元理事長の籠池泰典氏の別件逮捕―補助金詐欺事件の公訴状に共謀者として記載されていた。「学校法人元理事長らに対する詐欺被告事件の公訴事実の要旨」のなかでは、共謀した設計事業者Y(キアラ設計事務所)と建設会社Z(藤原工業)が登場する。また籠池氏の弁護士によると、藤原工業は検察と司法取引し、すべての責任を籠池氏に負わせて罪状を逃れている。NHKの報道では、「工事業者」とまるで客観的な立場にある事業者が発言したかのようになっていたが、藤原工業は、森友学園問題の核心点である約8億円の値引きに大きくかかわる事業者であった。その一方的な主張をNHKは、報道したのである。
問題はそれにとどまらない。「公訴事実の要旨」を見ると、これまで報告されてきた同じ工事契約にもかかわらず、金額が異なる契約書が複数存在したという点以外にも、事実が判明した。2通の工事契約書の金額の差が、なんと国が森友学園への払い下げにあたって値引いた約8億2000万円とほぼ同じなのだ。