5月1日の新天皇即位に伴う新元号が「令和」と決定した。発表日の4月1日を前に、新聞やテレビが期待感を盛り上げ、首相官邸が徹底的な情報管理をしたため、世論の関心は最高潮に達し、発表当日は新聞号外の奪い合いにまで発展する大騒ぎとなった。
「天皇の政治利用」という批判が出るのもお構いなしで、改元をショーアップ化することで政権浮揚を図った安倍首相の狙いどおりとなった。共同通信が新元号発表直後の1、2両日に実施した全国緊急電話世論調査で、安倍内閣の支持率は52.8%と3月の前回調査から9.5ポイントも大幅アップした。
メディア各社はすっかり安倍首相に踊らされたわけだが、いまや“国営放送”と化しているNHKも驚きの忖度をしたのが読売新聞だった。なんと1日の夕刊1面に、「令和」の墨書が入った額を掲げる菅義偉官房長官ではなく、談話を読み上げ記者会見した安倍晋三首相の写真を使ったのである。
新元号発表のスケジュールは3月29日に決まり、1日午前11時半から菅官房長官の発表、その後、正午から安倍首相の記者会見と公表された。生中継ができるテレビの昼ニュースの時間帯や、新聞の夕刊に間に合わせたとみられるが、午後1時前後とされる夕刊の締切時刻から考えればギリギリのタイミング。新聞の制作現場からすれば、少しでも早く写真が欲しい。
そんな時に30分の違いは大きい。それに、発表するのは菅官房長官なのだから、通常は同長官の写真を使う。実際、読売以外の全国紙(朝日、毎日、日経、産経)や首都圏で発行される東京新聞は夕刊1面に同長官が額を持った写真を掲載していた。つまり読売は、締切に遅れかねないリスクを取ってでも、安倍首相の写真を使うことにこだわったのだ。
「読売は安倍さんに配慮したとしか思えません。新元号発表にあたって、安倍さんはとにかく菅さんを目立たせたくなかった。平成改元時の前例踏襲なのだから、官房長官が発表するだけでいいのに、談話を自ら発表し、国民へのメッセージを伝えるという場面を新設してまで、自分を前面に出した。平成改元時の小渕恵三官房長官は元号発表を1人でやって歴史に名を残した。同じ手続きにすれば、菅さんの名が歴史に残ることになる。安倍さんはそれが絶対許せなかった。安倍さんのそうした心情を汲んだ上で、読売は菅さんではなく安倍さんの写真を使ったのでしょう」(永田町関係者)