過剰な忖度
新元号の原案に対する意見を聞いた有識者懇談会のメンバーにはメディア関係者が3人いたが、日本新聞協会の白石興二郎会長は読売新聞グループ本社の会長、民放連会長の大久保好男日本テレビ社長は元読売新聞の取締役だ(残る1人は上田良一NHK会長)。つまり有識者の2人が読売新聞関係者というわけで、「それも過剰な忖度と無関係ではあるまい」(前出の永田町関係者)という見方もある。
2日の朝刊も、各紙が菅官房長官の写真を使っているなか、読売だけが大きく安倍首相の写真を掲載していた。
「あまりの露骨さに、2日、読売の政治部記者は顔を隠して永田町を歩いていた」(メディア関係者)
そのうえ読売は、3日の朝刊でも安倍首相に配慮したかのような紙面展開。『本命案 根回しなし』『「令和ありき」批判さける』との見出しを打って、「令和」への誘導はなかったと説いたのだ。
新元号決定過程の舞台裏が明らかになるにつれ、何がなんでも「歴史上初の国書が典拠」としたい安倍首相が「令和」にこだわり、そこに落ち着くよう事務方が誘導したような様子が報じられている。3月上旬まで「令和」は候補名になかったとも複数のメディアが報じている。読売はそうした“デキレース”を否定しようとしているのだろうが、誘導ではないと書けば書くほど、わざとらしい。「安倍首相サイドからのお願いでもあったのか」(野党関係者)と不思議がられている。
「10月に予定される10%への消費増税で、最も軽減税率を熱望しているのが、宅配読者が最大の読売です。軽減税率が実行されるまでは、安倍首相に従順に従うつもりなのでしょう。最近の読売は“政権機関紙”の産経以上に安倍政権ベッタリが目立ちます」(前出の野党関係者)
「親安倍」「反安倍」でメディアを分断し、メディアをコントロールすることで長期政権を築いてきたのが安倍政権だ。媚びれば、ご褒美もある。読売の姿勢はそんな政権に対するわかりやすい忖度の仕方に見える。
「分断」でいえば、2日の朝刊では朝日新聞だけが「令和」以外の5案の情報を入手し、「英弘」「久化」「広至」「万和」「万保」だったと報じた。これを受け、杉田和博官房副長官が各社の記者に選考過程をレクチャーしたもよう。2日夕刊で全紙が6原案を横並びで報じていた。
「官邸が『反安倍メディア』に分類している朝日だけに情報を先行させない意図が感じられます」(前出のメディア関係者)
詰まるところ、どのメディアも安倍政権の手中にある、ということか。
(文=編集部)