静岡県・下田の海岸近くにある神社がインターネット上で関心集めている。その神社の名前は「BTS神社」。プライベートリゾート「BY-THE-SEA」の敷地内にあり、その頭文字を取って名付けたようだ。
名前だけなら問題はないのだが、そのBTS神社において、韓国のアイドルグループ「BTS(防弾少年団)」の写真がプリントされたタペストリーを掲げ、BTSの楽曲に合わせて宮司が踊り祈祷するといったイベントがSNS上に投稿されていた。さながら、BTSを商業利用しているように見え、拝観料2000円~、宮司による祈祷料が5000円~といった金額設定も物議を醸した。
BTSを無断で商業利用しているのではないか、という指摘が2月20日頃、SNS上に投稿されると、瞬く間にネット上で拡散された。韓国のメディアでも大きく取り上げられ、BTSのファン(通称:ARMY)から怒りの声が噴出する事態になった。だが、Business Journal編集部でも質問状を投げつつ、取材を申し込んだが返答はなかった。
そんななか、YouTuber「コレコレチャンネル」で22日、コレコレがBTS神社に突撃取材した様子が公開された。そのなかで、宮司の守屋英利がBTS所属事務所の許可は得ていないこと、直接事務所から抗議が来ない限りBTSの商業利用をやめるつもりはないといった趣旨の発言が紹介された。
すると、ネット上はさらにBTS神社に対する批判の声が殺到。BTSの所属事務所に抗議するように通報しようとの動きが盛り上がった。
そんな世間の声を受けてか24日、BTS神社は公式サイトで謝罪文を発表した。そのなかでは、守屋氏が宮司の格好をして祈祷し踊ったのは昨年6月13日の1回のみで普段は閉めていたことや、商業利用する意図はなかったことなどが釈明されている。同時に、神社は閉鎖し、TikTokに投稿していたBTS神社に関する動画などは削除された。
神社庁HPで確認したところ、BTS神社は登録されておらず、何かを祀った正式な神社ではないようだ。守屋氏も宮司ではなく、あくまでも「BY-THE-SEA」のオーナーでしかないとみられる。では、そんな“神社もどき”が「拝観料」「祈祷料」などを徴収したり、「お守り」を販売することは問題ないのだろうか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように解説する。
「おそらく、韓国アイドルBTSの肖像権やブロマイドの著作権は、その所属する芸能事務所にあるでしょうから、これらを勝手に使用すれば、肖像権侵害として損害賠償の対象になるでしょうし、著作権(複製権など)侵害として損害賠償の対象や刑事罰の対象となります。
確かに、宗教法人ではなくても拝観料などとして金銭を徴収したり、お守りを売ったりすること自体はできるので、問題ありません。たとえば、当職が作成した戦艦大和の模型を公開して拝観料をもらうのも自由ですし、当職が落書きした絵をもったいぶってお守りとして売るのも自由です。また、明治憲法下では、神社を名乗るには許可が必要でしたが、今は勝手に名乗れます。
しかし、どう考えてもふざけていますし、炎上を狙ったものであることは間違いないので、こういう場合は『あえて騒がないで無視』が、こういったふざけたシロモノをとっとと排斥する一番の方法かと思います」
BTS神社の謝罪文では、守屋氏自身がBTSのファンであって、BTSにエールを送るためにしたことだと強調しているが、肖像権を軽く見すぎた結果として大炎上を招いた。だが、本当のファンがBTSを掲げてお金を取るような行為をするだろうかとの疑念から、批判の声はなお多く残っている。
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
文=Business Journal編集部