8月24日にソニー損保が発表した「2021年全国カーライフ実態調査」によると、ドライブレコーダー(ドラレコ)をすでに搭載していると回答した人は前年から10ポイント以上増え、43%に達したという。
ドラレコが広く普及したことで、街中での事故やあおり運転の被害に遭った場合に、映像による証拠が残ることが多くなった。また、危険な運転やマナー違反などを目撃した場合に、その映像をSNSなどに公開する人も増えた。
そんななか、SNS上にあがった動画を見て、「なぜナンバーにモザイクをかける必要があるのか」「危険運転をしているクルマのナンバーは公開したほうがいい」といった声が散見される。テレビ番組でも、視聴者から提供されたドラレコ映像を公開する際には必ずモザイクをかけている。そのためか、ネット上に動画を載せる際には、ナンバーにモザイクをかけることが暗黙のルールかのようになっている感すらある。
モザイクをかける理由としては、ナンバーを公開することで、個人情報保護法に違反もしくは肖像権等の侵害を懸念している可能性が高い。実際のところ、ドラレコ映像をSNSに公開する際、ナンバーにモザイクはかけなければならないのか。たとえば、モザイクをかけずにドラレコ映像をテレビやネット上で公開した場合、違法となる可能性はあるのだろうか。
山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように解説する。
「街中の風景の画像や映像に、たまたま車が写っていた場合に、それを公開しても、まったく問題ありません。人物の顔やナンバーは個人情報ではありませんし」(山岸弁護士)
ちなみに、個人情報保護法が定める「個人情報」とは、以下のとおりである。
<生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)>
2007年以前は、陸運局においてナンバーから、登録してある個人情報を取得することができたが、今は「車体番号」が必要とされた。したがって、ナンバーだけで特定の個人を識別することはできなくなっており、ナンバーは個人情報ではないといえる。
では、なんらかの意図を持って特定のクルマを撮影した場合でも、その映像をSNSにアップしても違法とはならないのだろうか。
「ほぼ問題ありません。車やナンバーは個人情報ではありませんし、『外を走る』ことが前提とされている『クルマ』という性質上、『人に見られる』『撮影される』ことは一定程度、承諾があると考えられます」(山岸弁護士)
つまり、法律上はナンバーにモザイクをかけずにSNS上で映像を公開しても、問題はないといえる。とはいえ、過去にはユーチューバーが、街中で撮影した動画に偶然映り込んだ人から肖像権侵害などを理由に訴えられたことが話題になった。違法性はなくても、トラブル防止の観点からモザイクをかけたほうが無難であるとはいえるのだろう。
(文=編集部)
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。