デジタル庁がメールアドレス400件分、外部に流出させたことが大きな話題になっている。
11月24日、デジタル庁は牧島かれんデジタル大臣が、デンマークとデジタル分野における協力覚書を締結したとするプレスリリースをメールで送信する際、報道機関の担当者400件分のアドレスを「BCC(ブラインド・カーボン・コピー)」欄に入れるべきところ、「CC(カーボン・コピー)」欄に入れて送信したという。同庁は「今後は厳重に注意し、再発防止に努める」とコメントしている。
だが、なぜこれほど初歩的なミスが発生したのか、どのような再発防止策を講じるのかなど、具体的な説明はなされていない。
国全体のデジタル化を主導するため、政府肝入りの施策として今年9月に創設されたデジタル庁。そのあまりにもお粗末なミスに、ITジャーナリストの三上洋氏は苦笑する。
「BCCとCCを間違えて入力するというミスは、(メールが普及して以来)もっとも古典的なトラブルで、20年以上続いているものです。アナログからデジタルへの変化を推進するデジタル庁が犯すミスとしては、あまりにも残念です」
そもそも、プレスリリースを400件分も、メールでBCC欄に入力するという手法を取らなければならないのはなぜなのか。
「発表によると、メーリングリストに登録していた報道関係者のアドレスが流出したということなので、普段はメーリングリストの仕組みを利用しているが、今回はなんらかの理由で別の方法を用いたために発生したのかもしれません。また、旧来のメール送付によるプレスリリースを使わなくても、今は(便利で安全な)配信システムやソフトウェアがあるはずです。なぜこのようなミスが発生したのか、デジタル庁には説明してほしいところです」
初歩的なミスとはいえ、インターネット上には、10代から20代前半とみられる若者を中心として、「CCとかBCCって何?」という声も散見される。デジタルネイティブの世代とはいえ、スマートフォンの普及によって、パソコンにほとんど触れていない人も多い。そのため、新入社員などの間ではCC、BCCを知らない人も少なくないのかもしれない。
「デジタル庁とはいえ、職員の全員がITに精通しているわけではありません。また、全員が精通している必要もないと思います。しかし、ITに精通していない人でもミスなく仕事ができる環境を整えるべきです。人間はミスをするものですから、そのミスをカバーする仕組みをつくればいいと思います。
難しいシステムをつくる必要はなく、汎用のものをスマートに利用できるようにして、それをほかの官公庁や自治体にも広めるのがデジタル庁の務めではないでしょうか。そのために、まずデジタル庁はミスの根本的な原因を包み隠さず明らかにして、改善策まで示してほしいと思います」
デジタル化推進のためには、デジタルに精通していない人でもわかりやすく、使いやすいITの普及が不可欠だ。再発防止のためにも、今回のミスを教材として詳細な説明をしてほしい。
(文=編集部)