「とにかく立憲はケチだ」泉代表でも何も変わらない立憲民主党の悲劇
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
6月6日、関東は西日本よりも早く梅雨入りしてしまいましたね。連日の雨模様に、どんよりとした国会の雰囲気もさらにうっとうしく感じます。
さて、この原稿を書いている8日午後、立憲民主党の泉健太代表は岸田内閣と細田博之衆議院議長に対する不信任決議案を衆院に提出しました。内閣不信任案は、昨今の急激な物価上昇について、岸田政権と日本銀行への異議を示したものだそうです。これを受けて、与党は9日の衆院本会議で両不信任案を否決する方針を表明、予定通り、会期末15日を前に国会の攻防がヤマ場を迎えることとなりました。
内閣不信任案については、当初は7日の本会議までに出すともいわれていたのですが、野党内での調整がつかず、ずれ込んだようです。日程がずれても「野党統一」での提出とはならないようで、立憲とともに統一会派を組む社民党の新垣邦男氏が発議者に名を連ねたことが報じられていました。
内閣不信任案とは、「内閣の政権運営が信任できない」と判断した発議者を含む衆院議員50人以上の賛成者によって衆院に提出される決議案で、出席議員の過半数の賛成があれば可決されます。今回、内閣不信任決議案の賛成者は100名で、細田議長の不信任決議案の賛成者は93名でした(いずれも発議者含む)。
憲法第69条は「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」としていますが、可決されたのは過去に4例(1948年と53年の吉田内閣、80年の大平内閣、93年の宮沢内閣)しかありません。この4例では、衆院解散・総選挙となっています。
要するに、与野党が拮抗していて政権交代の機運がない限り、数の原理で否決されてしまいますから、そういう状況でないと意味がないんですよ。
提出までの行動と、本会議中の提案理由説明の講演や牛歩などの戦術の「パフォーマンス」を見てもらう場にしただけでは、正直「時間の無駄では?」と思ってしまいました。
この内閣不信任案だけではないですが、立憲は残念なことが多いです。泉代表選出で何か変わるかと思いましたが、野党をまとめきれず、菅直人元首相の「ヒトラー発言」のような大ベテラン議員たちの暴走も止められないし、内部の構造に変革があったようにも見えません。
昨年の総選挙で落選したある候補者が、「とにかく立憲はケチだ。こんなに費用をケチってばかりいたら、大きな政策も打ち出せない!」と怒っていました。政治に必要な経費はあるのですから、政党としてきちんとやればいいことなのに、国民の批判を恐れているのか、とにかく何でもケチるようです。
維新の反自民“演出”は選挙戦略?
また、日本維新の会という政党は立ち位置がはっきりしませんね。野党なのに「野(や)党でも与(よ)党でもない『ゆ党』だ」と自分たちで言っているのは何なんでしょうか。
昨年の総選挙後は、自民党控室の一部を「代議士会用に使わせてもらっている」と言って「与党に近い雰囲気」をアピールしていたのに、今は令和4年度の補正予算にも反対して、明確に反自民を“演出”しています。参議院議員選挙向けの計算高い行動なのでしょうか。
しかし、神澤は大阪府内での、おおさか維新の会の改革については高く評価しています。国の制度に先行する形で、2011年度から私立も含めた高校の無償化を目標に学費の援助を続けているのです。これは、中学校を卒業した子どもたちが進学する高校を自由に選択できるようにしてあげたいという趣旨でした。所得制限を設けたことは批判の対象となりましたが、早い時期から教育の無償化を進めたことは大いに評価できると思います。
現在は国の制度として高校の無償化制度は存在しますが、やはり所得制限があり、恩恵にあずかれない家庭もあります。神澤としては、これは子どもたちのための制度なので、世帯収入などに関係なく、申請は生徒が個人単位で行い、学校側に直接お金が渡るようにすべきだと思っています。
保護者の世帯年収に応じて、無償で通える生徒とそうでない生徒が混在している状況は、教育環境として望ましくないと考えています。そういう意味では、日本維新の会はマニフェストで明確に「高等教育(大学)までの教育無償化」を掲げていますから、がんばってほしいと思います。
“冒険”しない立憲とれいわの違い
不信任案について、泉代表は「採決の結果がわかっているからやらないとなると、すべての採決は与党多数なので不要になってしまう。これはあり得ない」などと発言していますが、泉代表は極端に「有権者」または「立憲民主党支持者」の批判を恐れているようです。このままでは夏の参院選も自民党の大勝になるような気がしますが、それを許してはいけないのです。
たとえば企業の場合でいうと、事業規模拡大のために奇抜なビジネスモデルの構築や意外なプロモーション戦略が求められることってありますよね。その突拍子もない例が、前回書かせていただいた「れいわ新選組の山本太郎代表の辞任劇」なんですが、これがいいか悪いかは別として、そういう冒険的な戦略を立憲はしないんですね。
与野党が拮抗している状況が最も好ましく、緊張感のある国会運営がバランスの取れた法律の策定につながり、景気の底上げにもつながっていくと思います。具体策を何十個も並べるよりも、与野党がしっかりと自分たちの仕事をすれば、何十倍もの効果につながるのではないでしょうか。
だからこそ、細かい政策協定はさておき、野党は協力して参院選を戦ってほしいと心底思っています。「え? 選挙あるの?」って感じの方も多いかと思いますが、7月に参院選の投票日があります。参院選は「投票日の少なくとも17日前に公示しなければならない」とだけ決まっていて、今回は18日前に公示予定です。もともと参院選は「17日間」という長ーーい選挙期間があるのですが、今回はナント18日間と、通常より1日多くなる予定なのです。
真夏ですし、体力がもつか心配ですが、神澤もがんばってみなさんに投票に行ってもらえるようプロモーションしていこうと思います。よろしくお願いします。
『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。