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問題行動多発だった娘が1カ月で激変…話題の「秋田県留学」の秘密に迫る

文=あかいあおい/A4studio
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秋田県のHPより

 今年6月、あるTwitterユーザーのツイートが反響を呼び、今「秋田県留学」が注目を集めている。その一連のツイートによると、ツイート主の先輩の娘が小学5年生だった数年前、突然、暴言を吐いたり帰宅時間が遅くなったり塾をサボったりという、問題行動を多発するようになった。しかし秋田県が公式で行っている秋田に留学させるという事業を利用したところ、1カ月間でその娘は生まれ変わったような顔つきで帰ってきて、問題行動がおさまったんだとか。

 ツイート主は「子育てって引き出しの多さ超重要!と思った」とも語っていたが、リプ欄では「ほんと子育てに引き出しの多さって重要だな」「これ、10年早く知りたかった…」など称賛の声が多く上がっている。

 そこで今回は秋田県留学を実施している秋田県教育庁 生涯学習課の佐々木泰生氏に取材。秋田県留学とは具体的にどういった事業なのかを聞いた。

秋田型教育留学推進事業は2016年に始まった

 まず、秋田県留学とはどういったものなのか。

「県が率先して取り組んでいる事業のひとつで、正式名称は『秋田型教育留学推進事業』というものです。県内の小中学校を留学先として平成28年(2016年)からスタートし、昨年度までに366名のお子さまに留学いただきました。

 留学の形式は大きく分けて短期留学と長期留学の2つがあり、短期留学の場合は3泊4日程度、長期留学の場合はオーダーメイドで日数を設定することができます。過去には長期留学として100日以上本県で過ごしたお子さまもいらっしゃいましたね。定員は地域によっても異なるのですが、短期留学の場合は10〜20名、長期留学の場合は5名程度をその都度募集しています」(佐々木氏)

 そんな秋田型教育留学推進事業も、コロナ禍の影響を受けているようだ。

「スタートしてから令和元年までは順調に実施しておりましたが、新型コロナウイルスの蔓延で、令和2年度は全面中止、令和3年度も計画通りに実施することができませんでした。今年度は仙北市で8月4日から7日まで行われる短期留学が決定しているのですが、それも家族留学という形式で募集しました。

 家族留学とは文字通りお子さまとご家族が一緒に留学を体験するというもので、保護者の方も来ていただければ、不測の事態が発生したときも対応しやすいという理由からこの方法を取っています。残念ながらTwitterで紹介されているようなお子さまだけで留学していただく形式は、現在再開の見通しがたっていない状態です」(同)

夏休みのズレを利用した画期的な留学とは?

 では、秋田県留学では具体的にどのような体験ができるのか。

「体験活動は多岐に渡るのですが、秋田県の小中学校は8月下旬には夏休みが終わって登校が再開するところが多いのですが、8月いっぱいまで夏休みという地域は、首都圏を中心にかなりありますよね。

 この夏休みのズレを利用して、秋田県の小中学校に通ってもらおうというのがこの留学のコンセプトのひとつです。お子さまにはいわゆる小中学校の林間学校で利用するような施設で寝泊まりをしていただきながら、2学期が始まっている秋田県の小中学校に実際に通っていただき、秋田県の子どもたちと一緒に勉強してもらいます。そして平日の放課後や休日を使って、秋田県の自然に触れる体験をしてもらうというのがオーソドックスな流れになっています」(同)

 実際に秋田県の子どもたちと集団生活を送りながら、都会にはない自然と触れ合うこともできるというわけだ。自然体験はどのようなことをするのだろうか。

「こちらも実施する地域や季節によって異なるのですが、そば打ち体験や秋田県の郷土料理のきりたんぽ作りなどの食に関する体験、そのほかにも熊を狩猟して生活を送るまたぎの暮らしを学べるまたぎ体験などがあります。さらに夏であればカヌー、カヤック、いかだ下りなど海や川や湖を使った自然体験、冬は降雪地帯なのでスキー体験やそり遊び、かまくら作りなども体験しながら楽しめます。

 また、学校に通えないお子さまに対応した受入なども行っています。このようなオーダーメイドの場合は、事前に親御さんとしっかり話しながらプランを立てるということを大切にしていますね」(同)

もともとは子どもに影響を与える目的ではない

 秋田県としては、Twitterでの反響について、どのように考えているのか。

「そのツイートは我々も拝見し、お子さまが激変されたとのことで感激しました。ですが、もともとこの留学は、子どもに何か影響を与えたいというような目的ではなかったのです。というのも秋田県は人口の減少や高齢化が全国でもとりわけ進んでおり、深刻な問題として対策を進めている状況です。その施策のひとつがこの秋田型教育留学推進事業でした。

 秋田県は豊かな自然が魅力なのはもちろんですが、実は小中学校の全国学力・学習状況調査の結果が毎年トップレベルなんです。ですから秋田県の授業を体験してもらったり、豊かな自然に触れてもらったりして、秋田県の魅力を肌で感じてもらうことで、秋田県のファンを増やしたいというのがそもそもの目的でした」(同)

 佐々木氏によると子どもの成長を目的としたものではないため、追跡調査などもしておらず、そのため具体的に子どもにどのような影響が出ているかなどはわからないという。

「過去には秋田県留学のお別れ会で、“自分が必要とされている気がして嬉しかった”と涙を流したお子さんもおりました。秋田県はまだまだ三世代家族のご家庭が多いうえに、子どもたちが減っていることもあって、地域の子どもたち全員を我が子のようにかわいがる昔ながらの文化が続いています。ひょっとしたらこのような人間関係が、涙を流したお子さんや、ツイートの娘さんの心に響くものがあったのかなと感じています」(同)

 最後に今後の施策について聞いた。

「今年度も計画通りに実施できていないので、まずはお子さまだけでの留学が可能な状態になるなど、コロナ禍前のような計画・実行ができるような社会状況になってほしいと考えています。そして今後の展望としては、お子さま留学のほかにもどんなスタイルができるのかを考えて、さまざまな留学の形式を提案したいと思っております。例えば秋田県には空き家が増えているので、これを活用できないかなど思案中です。

 そういう埋もれてしまっているものをうまく活かして、秋田県の魅力発信につなげられればと考えています。そして最終的には秋田県が移住・定住の候補地として選んでもらえるようにすることが、我々の使命ですね」(同)

 話題の秋田県留学は、秋田県のファンを増やすことを目的に実施されていたものが、結果的に子どもの成長を促す副次的な効果もあったということのようだ。いずれにしてもこの事業によって、秋田の魅力を再発見している方は多いのではないだろうか。

(文=あかいあおい/A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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