「それに対しFCCJは、5月28日、F&B部門以外で働く人も含め、契約社員とパート64人を6月いっぱいで雇い止めすると通告しました。組合は反発し、翌日、石原慎太郎都知事の食事つき会見にぶつけてストライキを決行。大騒ぎになりました」(関係者)
FCCJはなぜ、F&B部門の切り離しを急ぐのか?
表向きの理由は「公益法人改革」だ。現在は特例社団法人であるFCCJは、13年11月までに一般社団法人になるか公益法人になるかを、選ばなければならない。公益法人になるには、事業支出の50%以上が公益事業に使われなければならず、一般の収益事業であるF&B部門がネックになった――というのが、FCCJの説明だ。バウムガルトナー会長は、「公益法人化で先行した日本記者クラブやフォーリン・プレスセンターに(対し)、FCCJは『公益目的の活動では決して負けていない』という自負心が働いていることも確か」と、2月28日付の内部文書で明かしている。
理由は日本記者クラブへの見栄?
競合団体に負けられないという”見栄”でクビになるなんて、従業員はたまったものではないが、そもそもF&B部門は収益事業なのか?
「そんなことはありません。会員のためのサービスで、イベントや記者会見に付随したものです」と言うのは、FCCJベテラン社員だ。公益法人問題を担当する内閣府公益認定等委員会も、「美術館の中の喫茶コーナーが公益事業として認められた先例もあり、『レストランだから直ちに公益事業ではない』とは言えません」(事務局)と説明する。
では、FCCJがF&B部門を切り離したい本音はどこにあるのか?
バウムガルトナー会長によれば、同部門は年間2億円前後の赤字を出し(10年度)、FCCJ自体も過去4年間にわたり、「毎年、3500万円近くの営業欠損」を出しているという。背景には、国際的なメディアのアジア拠点が、東京から他のアジアの都市へと移り、日本にいる特派員の数自体が減っている事情もある。
つまり、混乱の一因はFCCJのガバナンスにあるといえよう。FCCJの運営は、毎年の選挙で決まる理事たちが行う。バウムガルトナー氏は二期目だが、会長もほぼ毎年替わる。「経営に継続して責任をもつ人が誰もいない」ともいえ、中堅社員は、「会長と一部の取り巻きと総支配人とで、会員もよくわからないうちに事が進んでいるのです」と声を潜める。
FCCJを運営する理事たちは、内外の優秀なジャーナリストたちだ。取材、報道で発揮している力と情熱を、もう少しだけ協会運営にも注げば、事態は正常化に向かうようにも思えるのだが。
(文=北 健一/ジャーナリスト)
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