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アフラトキシン汚染食品、国内に広く流通か…輸入時の検査率、わずか1割

文=小倉正行/フリーライター
アフラトキシン汚染食品、国内に広く流通か(「gettyimages」より)
アフラトキシン汚染食品、国内に広く流通か(「gettyimages」より)

 2021年度の輸入食品監視統計が発表された。コロナ禍からの回復で、輸入届出件数は前年比104.4%の245万件と前年より10万件増加し、輸入重量も前年比101.8%と56万トン増の3162万トンとなった。

 検査人員が増えないなかで輸入件数も輸入重量が増加した結果、検査率は8.3%と前年より0.2ポイント下落した。その結果91.7%は無検査で輸入されている。厚生労働省は、検査計画通り実施しているから問題ないとしているが、国民は輸入食品の9割以上が無検査である実態をこれからも甘受していかねばならない。そして、これが深刻な事態を招こうとしている。

 アフラトキシン汚染食品をめぐって、これまでにないような深刻な事態が生じている。アフラトキシンは熱帯地域のカビ毒で、自然界の最強の発がん物質とされており、世界的に厳しく輸入規制されている。今のところ日本では発生していない。毎年、アフラトキシン汚染で熱帯地域からの食品輸入が停止となっているが、最近では2005年の超大型ハリケーン・カトリーナによって米国南部やミシシッピー川周辺が甚大な洪水被害に遭い、とうもろこしや小麦などが水浸しになり、農作物のアフラトキシン汚染が広範囲に広がった。

 これまで輸入食品のアフラトキシン汚染の事例は、米国や中国からの輸入食品・飼料がほとんどで、それらの国からの輸入食品を厳しく検査(命令検査:検査結果が出るまで輸入を認めない検査)していた。ところが2021年は、アフラトキシンに汚染された食品の輸出国は、米国と中国に加え、ブラジル、トルコ、インド、ポーランド、ベトナム、アルゼンチン、スペイン、イタリア、ウガンダ、バングラデシュ、インドネシア、イラン、スリランカ、ネパール、パキスタン、南アフリカ、タイ、フランス、イスラエルなど19カ国に及んでいるのである。ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア、南米まで全世界に広がっており、これまでにない現象である。

 原因として指摘されているのが異常気象であり、米国の小粒落花生、中国のそば、ネパールのそばの粉、インドネシアのナツメグが被害を受けている。

モニタリング検査や自主検査で判明

 また、加工食品にも汚染が広がっている。アフラトキシンは熱に強く、130℃まで加熱されてもその毒性は失われない。ポーランドのチョコレート類、ブラジルのピーナッツ製品、スペインの菓子類、イタリアのピスタチオナッツペースト、バングラデシュのスナック菓子類、イランの洋菓子、中国の菓子類、パキスタンの菓子類ミックス、イスラエルのピスタチオナッツペーストなどがアフラトキシンに汚染されている。ポーランド、ブラジル、スペイン、イタリア、イスラエルからの加工食品が汚染されていたのは、これまでにもなかったことであり、世界的に広がっている。

 さらに深刻なのは、その輸入食品汚染がモニタリング検査や自主検査で判明する事例が多く出ていることである。これまでは、米国や中国などのアフラトキシン汚染が常態化している地域やその可能性の高い作物を中心に命令検査によって輸入を防いできた。しかし、2021年には汚染事例の約1割が命令検査以外の検査で判明している。国が実施しているモニタリング検査の結果が出た時点では、国内にすでに流通し消費されている。

 それも検査対象は年当初にモニタリング計画を立てて行うもので、ランダムに選定される。そして、検査率はわずか2.7%。アフラトキシンは急性毒性ではないので、汚染食品を食べてもただちに症状が出るわけではないが、細胞レベルではガン化が進行し、10年後にはガンを発症することになる。

 そのような事態を防ぐには、輸入食品の検査率を大幅に引き上げなければならない。現在のような91.7%が無検査で輸入されるような検査体制を人員増強で強化することは急務である。

(文=小倉正行/フリーライター)

小倉正行/フリーライター

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。
主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数

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