連鎖販売取引(マルチ商法)で違法な勧誘をしていたとして、消費者庁から新規勧誘などの一部業務の6カ月間停止を命じられていた日本アムウェイの行政処分が13日に終了する。勧誘再開と新生活シーズンが重なってしまったこともあり、違法な勧誘行為が再び多発する懸念が高まっている。
日本アムウェイ(日本アムウェイ合同会社)は、日用品や健康食品などの販売を担う会員として個人を勧誘し、その会員に「紹介料が得られる」としてさらに別の人を勧誘させ、販売組織を連鎖的に拡大していくマルチ商法を展開。昔からトラブルが絶えなかったが、昨年10月に消費者庁が「会社名や目的を明らかにしないまま、違法な勧誘を行っていた」などとして、初めて行政処分を下した。
問題となった行為の具体例としては、女性会員がマッチングアプリを通じて男性を強引に勧誘する、SNSを通じて誘われた「女子会」で突然コスメ販売の話をされる、SNSに掲載されたサークル募集に応募したら事務所に連れていかれた、といった事例が確認されており、いずれも社名や目的を伏せたまま相手と接触し、執拗な勧誘をしていた。
消費者庁からの処分を受けて、日本アムウェイは「一部会員の違法行為を踏まえ、改めて『倫理綱領・行動規準』および会員に向けたトレーニングの見直し、関連法令や規則の周知、コンプライアンスの更なる徹底などを通じていかなる違法行為も許さない姿勢で、実効性のある業務改善と再発防止対策を講じてまいります」とし、業務の改善と再発防止に取り組むとした。
業務停止期間中は会員間のみで取引が可能だったが、14日以降は新規の勧誘を再開するとみられる。新生活シーズンは新大学生や新社会人がマルチ商法のターゲットにされやすく、歓送迎会などのイベントで人と人の接触が多くなるため、違法な勧誘行為が増えやすいといわれている。日本アムウェイがルール徹底を周知したとしても、とにかく多くの人を勧誘しなければならないというビジネスの仕組み的に、すべての会員が法令を順守するようになるのかは疑問が残る。
中高年世代からすると「まだ違法なマルチ商法に引っかかる人なんているの?」という印象もあるが、実は令和のいまでもマルチ商法は「現役」だ。今年3月だけでも、ビジネススクールの契約をめぐるマルチ商法を展開していた「President」とその関連企業2社が東京都から9カ月間の業務停止命令を下され、「3人に紹介すれば携帯代がタダ」といった触れ込みで格安SIMカードを用いたマルチ商法をしていた「ゼロモバイル」と関連事業者が消費者庁から9カ月の取引停止処分を受けた。
ウェブスターマーケティングが3月に発表した「マッチングアプリ利用時のトラブル」のアンケート結果によると、調査対象全体の15.3%がマッチングアプリでトラブルに巻き込まれたことがあり、もっとも被害が多かったトラブルは「マルチ商法(30.5%)」となった。マルチ商法の危うさをあまり認識していない若者世代が標的にされやすく、現代ではマッチングアプリやSNSが違法な勧誘の「温床」となっていることがうかがえる。
マルチ商法最大手の日本アムウェイが処分明けの14日からどのような方針を打ち出していくのか、違法勧誘の被害に遭う人がひとりでも減るような改善策を期待したい。