3月28日、都内高級マンションの賃貸、売買などの仲介を行う「RENOSY PLUS」が、年収1000万超プレイヤーを対象に調査した「住みたい街ランキング2023 by Modern Standard」を発表。見事1位に選ばれたのは、東京都江東区の豊洲だった。
豊洲といえば、2018年に公設卸売市場である豊洲市場が築地市場から移転し、話題となった街。2000年代以降はタワーマンションが数多く建設され始め、パワーカップルをはじめとした若年ファミリー層からの人気が高いエリアとなっている。そのほかにも駅近くのスーパーマーケット「ライフ」が昨年9月にリニューアルオープンしたことにより、豊洲直送の鮮魚やブランド野菜などの品ぞろえが楽しめると注目が集まった。三井不動産が手掛ける大型商業施設「アーバンドック ららぽーと豊洲」や「イオン東雲店」といったショッピング施設もあり、人気となっている。またオフィス街もそばにあるので、夜になっても人通りが多く、暗い道が少ない傾向にあり、治安も悪くはないそうだ。
しかし、家賃相場は東京都心のなかでもかなり高めの額になっている。不動産情報サイト「SUUMO」によれば、豊洲駅のワンルームの家賃相場は12.3万円となっており、江東区平均である8.2万円の1.5倍になっているのだ。都内最高値の平均家賃相場を誇る港区でもワンルームで10.9万円なので、いかに豊洲の平均家賃相場が高いか理解してもらえるだろう。利便性はたしかにいいが、一方で家賃が高いため、高所得世帯向けのエリアという印象が強い。そこで今回は実際に豊洲駅周辺を探索し、その実情をレビューしていく。
タワマンが多い駅近は買い物しやすそう
豊洲駅は東京メトロ有楽町線と、ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線が乗り入れており、新宿駅から電車でおよそ30分弱、東京駅からはおよそ20分弱の場所にある。探索するために豊洲駅に到着した時刻は平日の16時頃だったため、改札口に降りても利用者はそこまで多くなかったが、朝晩のラッシュ時はかなり混雑するようだ。2021年度の豊洲駅の一日平均乗降人員は14万8607人となっており、東京メトロ全駅で6位と屈指の利用者数を誇っている。
3番出口から降りると、さっそく、ららぽーと豊洲とタワーマンションがお出迎え。駅から1~2分ほどの距離にあるため訪れやすい立地にあるららぽーと豊洲は、全部で3つの館に分かれている。テナントは200以上であり、ファッション、飲食、食品、書店、電気屋、クリニックなどが揃っているため、この地域の生活の拠点になりそうな大型施設だ。たいていの用事はここで済ませられそうであり、利便性が高いと感じた。また海に面したロケーションでもあるため、潮風を浴びながらショッピングを楽しめるのも一興である。
タワマンは、豊洲駅周辺ではいくつも散見される。豊洲では1992年に豊洲センタービルの完成をきっかけとして、住宅地、商業地が盛んにつくられ、1990年代後半からタワマンが林立されるようになった。写真を見るとわかるが、豊洲駅を囲うようにタワマンがそびえたっているので、ある意味迫力ある光景となっている。
駅前付近には、りそな銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行と大手銀行が軒を連ねており、コンビニやファストフードチェーン店も確認できた。高所得者が多いエリアとはいえ、こういった庶民的なチェーン店も店を構えているのだ。
駅から南側に向かってみると、徒歩2分ほどでスーパーマーケット「ライフ豊洲店」が姿を見せた。店内2階には豊洲市場から直送された鮮魚や野菜、3階にはワインなどの酒類のコーナーが充実している。リニューアルしたばかりということで、店内は清潔であり気軽に買い物できそうである。
注目の「豊洲市場」周辺も探索してみた
ライフを出て、さらに進むと東雲橋に到着。橋を渡る途中で気になったのが海抜だ。写真のとおり、橋のすぐ下に海が見えており、豊洲一帯が平地であることがわかる。ただ江東区としては、南海トラフ巨大地震や首都直下地震など想定され得るあらゆる地震において、「堤防や防潮堤を越えるほどの大きな津波に襲われる可能性は極めて低い」と示していた。
橋を渡り終えると「イオン東雲店」が見えてきた。23区内のイオンにしては、比較的大きい規模に思える。食品、飲食、クリニック系を中心としているので、一般的なイオンのスタイルと少し異なるようだ。
また象徴的だったのが、イオンのすぐ後ろにタワマンが数棟そびえ立っていたこと。イオンというと、都内でも郊外や地方に立地していることが多いため、タワマンがそばに数棟あるという光景は、豊洲ならではに感じる。当然、近隣のタワマン住民にとっては、このイオンの存在が非常にありがたいのだろう。
それでは最後に豊洲市場に行ってみよう。豊洲駅から豊洲市場がある市場前駅まではゆりかもめで2駅。豊洲駅から歩いていくと20分弱かかる。
なお豊洲市場は5時~15時までの間であれば一般の人でも入場可能となっているが、市場開場日は決められているので、事前に豊洲市場のホームページを確認しておくといいだろう。なお豊洲市場一帯は、まだ開発が進められているようで2024年2月には豊洲市場に隣接する大型商業施設「千客万来施設(仮称)」がオープン予定。飲食・物販店や温泉もあり、観光客や近隣住民を呼び込み、豊洲をさらに盛り上げる起爆剤になるかもしれない。
以上、豊洲に行ってきた感想を率直に伝えてきた。結論からいうと、たしかに高所得者層ならば豊洲で快適に過ごすことができるだろう。大型ショッピング施設だけでなく、庶民的なスーパーマーケットやファストフード店もあるため、思ったほど気取った街ではなさそうだ。交通の利便性も悪くはないため、高い物価と家賃を賄える人であれば、選択肢としては十分にアリだといえる。
けれど、東京には豊洲よりもショッピング施設が充実し、主要駅へのアクセスがよく、なおかつ家賃相場が同等かそれ以下のエリアも多い。そのため、やはり万人におすすめできるエリアとはいいがたいというのが正直なところであった。
(取材・文=A4studio)