NTTドコモは、ドコモショップや量販店など店頭での新規契約や機種変更等、各種手続きにかかる事務手数料を7月1日から値上げすると発表した。
現在、電話番号保管は1100円、機種変更や名義変更、SIM再発行などは2200円、新規契約や契約変更は3300円だが、改定後はこれらが一律3850円となる。値上げの理由についてドコモは、物価高や電気料金の高騰に加え、「説明事項の増加などによる店舗運営に関わる各種費用を考慮」したとしている。
ちなみに、競合他社の事務手数料を見てみると、KDDI(au)が4月20日から値上げしたほか、ソフトバンクも6月1日からの値上げを発表している。また、各社が展開する格安スマホブランドであるpovo、UQモバイル、ワイモバイルも同じ料金設定で、いずれも一律3850円となっている。値上げの理由も各社ほぼ同じだ。
ドコモの発表を受けてネット上では、「それぞれに経営事情は異なるはずなのに同じ金額になるのはおかしい」「談合ではないか」「公取委は仕事しろ」など、公正な価格競争が行われていないのではないか、と指摘する声が噴出している。
この場合、仮に問題になるとすれば、独占禁止法が規定する「不当な取引制限(カルテル)」が該当するだろうか。公正取引委員会のHPによれば、カルテルは「事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為」とされている。
つまり、携帯電話業界の大手3社が、相互に連絡を取り合って、手数料価格を決めていた場合には、違法となるわけだ。Business Journal編集部は公正取引委員会に、キャリア3社が事務手数料を同額に設定したことが独禁法に抵触する可能性があるか、見解を聞いた。
――NTTドコモが7月から事務手数料を3850円に上げると発表しましたが、大手3社が同額になったことで、「公正な市場競争が行われていない」と独禁法違反を指摘する声が多くあがっています。実際に違法となる可能性はありますか。
公取委「事務手数料が同額となったからといって、即違法となるわけではありません。今回のケースでは、先行する業者の価格に、ほかの業者が追随しただけとみており、話し合って同じ価格にしたとは考えにくいですね」
――業界内で同じ価格になったとしても、お互いに連絡を取り合って価格を決定した、といった事情がない限り、違法ではないということですね。
公取委「その通りです」
つまり、同じ業界内で“話し合って価格を決定すること”が違法なのであり、“他社が設定した価格に追随して同じ価格とすること”は、法的に問題とならないわけである。
とはいえ、消費者としては、業者同士が価格競争を行って、少しでも安くなってほしいと願うのが正直なところだろう。
(文=Business Journal編集部)