●国民の生活を圧迫する、世界有数の税金大国
また、税金も高額だ。筆者がサンパウロ市内のホテルに宿泊した時のことだが、所用でホテルから20分程度、市内電話をかける機会があった。その際フロントから要求された料金が15レアル(約645円)。予想以上の高さに驚いた筆者は、フロントに料金の詳細を確認したが、担当者も利用料金に25%の税金がかかる点までは理解していたが、そのほかにも2重、3重に税金がかかり、詳しくはわからないという。つまり、現地に住むブラジル人もよく理解していないほど、税金のシステムが複雑なのだ。
ブラジルは世界有数の税金大国として知られているが、社会保障と負担金を足すと、スウェーデンとフランスに次ぐ世界第3位の税金の高負担国だ。しかしブラジルとこの2カ国では、社会福祉制度・医療制度・年金制度の充実具合に大きな差がある。ブラジルでは、払った税金が納税者にどの程度還元されているのかは不透明で、国民は個人年金をかけたり、民間の医療保険に加入するケースが多い。
ちなみに、各製品にかかる税金は次の通りだ。テレビ38%、ビール56%、コーヒー36.52%、ボールペン48.69%、iPod50%、自動車は各パーツごとに課税。この高税率にもかかわらず、給与水準は低く、一般的に穏やかでデモ行為を好まないとされるブラジル人が、デモを起こす気持ちに理解を示したくもなる。
ブラジルの失業率は、11年から6%程度と過去にない低い水準で推移しているが、労働条件、社会保障、税金問題など、ブラジルが経済大国に成長するための課題は少なくない。W杯、リオデジャネイロ五輪を控え、ブラジル経済にとっては明るい材料が揃っている。自国開催でのW杯で、02年以来6度目の世界一。悲願ともいえる五輪での金メダル獲得。ホームとなる2大会でサッカー大国の意地を見せることができれば、経済成長への強力なアシストとなることは間違いないだろう。
(文=栗田シメイ/Sportswriters Cafe)