それだけではない。13年1月から25年間、復興特別所得税として所得税が2.1%上乗せされている上に、さらに今年6月からは10年間、復興特別住民税として1人当たり1000円が住民税に上乗せされる。年金・健康保険料のアップや、各種控除の廃止・縮小も着々と実施されていく。
「ここのところ、いくら給料をもらっても、なぜか生活が苦しい」という実感を持つ人も多いだろう。日本のサラリーマンの場合、所得税の源泉徴収や年末調整のシステムによって、税金の存在が見えにくくなっているが、「隠れ増税」というかたちで、日本が重税国家化しており、家計への負担が増しているためだ。
●マイナンバー制度導入で、個人資産に直接課税?
16年1月からは、マイナンバー制度が導入される。
マイナンバー制度は「国民一人ひとりに12桁の番号(企業は13桁)を割り当てて、氏名や住所、生年月日、所得、税金、年金などの個人情報を、その番号で一元管理する」というものだ。
これが導入されると、これまで、国や地方自治体がばらばらに管理してきたために煩雑になっていた手続きが簡素化され、年金記録の記載漏れなどのミスや、生活保護費の不正受給も防ぐことができ、社会的な不公平も是正されるという名目で国会でもすんなり成立したが、財務省・国税の狙いは別のところにある。
すでに、国税庁はKSKシステム(国税総合管理システム)という、納税者の売り上げ、借入金、金融取引などの情報を管理するシステムをもっているが、マイナンバー制度が開始されると、全国民の金の流れを一元管理できるようになる。それどころか、将来的には「これまでできなかった預貯金の残高、支払い利子などにマイナンバーをひも付ける。そうすれば資産状況がわかる」ようになるのだ。
実は、財務省では以前から個人の資産に直接課税する「資産課税」を検討している。「資産課税」を導入するために必要な、徹底して捕捉できるシステムが、KSKシステムにマイナンバー制度を併用することで完成するのだ。
資産が把握できれば、脱税どころか節税の手法も国税庁に筒抜けになる。国のつくった莫大な借金を増税というかたちで納税者に転嫁し、納税者からは死ぬまで徹底的に税金を搾り取る国税庁の納税者監視システムになるのだ。
これから加速する重税国家化に備えて賢く生きるためには、税の知識も必要になってきそうだ。
(文=和田実)