そんな受験ビジネスの勝ち組といわれたリソー教育の粉飾決算が、2月14日に発覚した。当時の伊東誠社長が引責辞任し、創業者で会長の岩佐実次氏が社長に復帰した。
リソー教育が5月23日に開催した株主総会では、株主から岩佐氏の経営責任を問う声が上がった。岩佐氏は「売り上げの水増しを知らなかった。第三者委員会の報告でも『落ち度があるとまで断定できない』となっている。再建し、信頼を回復したい」と引責辞任を否定。役員選任の議案では、岩佐氏は85.45%の賛成で選任された。
リソー教育は、小学生から高校生を対象にした個別受験指導塾「TOMAS」を首都圏で70校展開。このほか、家庭教師を派遣して個別指導を行う「名門会」を全国で40校、小学校と幼稚園の受験指導を行う「伸芽会」がある。
TOMASでは生徒が欠席した場合には、受領済みの授業料を返却する仕組みになっているが、当日に欠席を申し出た場合には返却されないと定めている。この仕組みを悪用し「当日欠席」が多数あったように装い、実際には返した授業料を売り上げとして計上していた。リソー教育が設置した第三者委員会は、過去6年間に売り上げ83億円を水増ししていたとする報告書を提出。同社は調査報告書を踏まえて過去の有価証券報告書を訂正。2014年2月期の連結売上高は197億円で、最終損益は26億円の赤字に転落した。
第三者委員会は、岩佐会長の売り上げ重視の経営方針が粉飾決算の背景にあったと指摘。リソー教育グループ8社は毎年20%成長を目標に掲げ、信賞必罰の人事評価で目標達成に邁進した。達成できなければ部下も含めて降給・降格となるため、グループ会社の経営陣は何がなんでも増収・増益を達成しなければならず、そのプレッシャーから売り上げの水増しという不正会計に手を染めたとみられている。売り上げを水増しした決算をもとに株主に45億円の違法配当をしていたが、そのうち13億円は筆頭株主の岩佐氏が受け取っていた。
リソー教育の監査法人は「継続企業の前提に疑義」があると指摘し、金融庁は、決算を粉飾したとして金融商品取引法に基づき4億1400万円の課徴金を支払うよう命じた。東京証券取引所は内部管理体制に問題があることを投資家に知らせる「特設注意市場銘柄」に指定した。改善が見込めなければ上場廃止になるため、受験ビジネスの勝ち組は、崖っぷちに追い込まれているといえる。
(文=編集部)