新成長戦略を巧妙にすり替え
さて、正体が謎めいている「健康関連サービス産業」だが、10年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」の健康大国戦略では、「医療・介護と連携した健康関連サービス産業」となっていて、「25兆円・80万人」との数字もまったく同じだった。ちなみに、「健康」が「ライフ」に言い換えられただけで、健康大国戦略の20年までの目標「50兆円・284万人」の数字も、そっくりそのまま日本再生戦略のライフ成長戦略にスライドされている。
要するに、新成長戦略の数字をただコピーしただけなのだ。すると、新成長戦略に書いてあることが、今度の健康関連サービスの中身だと推測できる。
そこには、
・医療・介護従事者間の役割分担を見直す
・医療機関の機能分化や高度・専門的医療の集約化を図る
・介護施設、居住系サービスの増加を加速させる
・バリアフリー住宅の供給を促進する
・生涯学習や旅行など新たなシニア向けサービスの需要を創造する
といった内容が書かれていた。
健康関連サービスといっても、健康食品や健康器具、フィットネスクラブなどが含まれるわけではなく、おおむね医療、介護の分野だと思っていいようだ。
人件費のカラクリ
日本再生戦略で、主に医療、介護の分野に新たな市場規模25兆円が上積みされるというのは、売上高がそれだけ増えることを意味する。医療も介護も広い意味でサービス業なので、市場規模とは売上高の総和だと考えていいだろう。
その売上高の中で、人件費はどれぐらいの割合を占めるのか?
それを「(売上高)人件費比率」という。人件費と売上高についてはTKC全国会が全国の中小企業(医療、介護事業者のほとんどは中小企業規模)の平均値を出していて、その「TKC経営指標」速報版(サービス業/今年2~4月期決算)をもとに計算すると、次のようになっている。
<医療>
無床診療所 51.7%
歯科診療所 51.3%
按摩マッサージ師・鍼灸師・整復師 54.8%
その他の医療に附帯するサービス業 40.1%
<介護>
訪問介護事業 67.2%
通所・短期入所介護事業 61.6%
認知症老人グループホーム 64.2%
その他の老人福祉・介護事業 65.1%
ざっくり計算すると、人件費比率は医療は50%、介護は65%が平均的な数字である。