厚生労働省は20年の医療市場規模を59兆円、介護市場規模を19兆円と見積もっていて(「厚生労働分野における新成長戦略について」による)、新規市場の25兆円をその比率で分けると医療19兆円、介護6兆円になる。それぞれの人件費比率を掛けて総人件費を計算すると、医療は9.5兆円、介護は3.9兆円になる。
日本再生戦略では新規雇用80万人の内訳が明らかでないが、10年3月末現在の医療業の就業者数は349万人、社会保険・社会福祉・介護事業の就業者数は291万人(厚生労働省「労働力調査」による)で、1年間の増加数はほぼ同じ。55%対45%の比率が今後も変わらないと仮定すると、80万人のうち44万人が医療、36万人が介護になると思われる。
介護職員の年収が、あと8年で4倍以上に?
さて、医療、介護それぞれの1人当たりの人件費を計算してみると、非常に興味深い結果が得られた。
医療 9.5兆円÷44万人=2159万円
介護 3.9兆円÷36万人=1083万円
一般に、人件費には通勤交通費、社会保険料の会社負担分や退職金の積み立て、教育研修費などが含まれて年収のおよそ2割増になるといわれているので、医療は年収1799万円、介護は年収902万円になる計算だ。
医療のほうには医師や看護師も入っているので、20年の1人当たり年収約1800万円というのも「ありえるかな」と思えるが、介護の年収約900万円というのは、あまりにも意外すぎてビックリ仰天だ。
というのは、介護保険の介護報酬が低く抑えられているために、現状の介護職員の待遇の悪さは世の中に広く知れ渡っているからである。
年収200万円以下で働いて、激務・薄給に苦しみながらがんばっている介護職員はたくさんいる。多くは非正規労働者で、その年収は平均206万円。200万円以下は52.2%を占める(全労連ヘルパーネット「高齢者分野の介護労働実態調査」による)。使命感に燃えて介護の仕事につきながら、先の見えない状況に絶望してやめていく若い人は後を絶たない。
そんな人たちの収入が、単純に言えばあと8年で4倍以上になるというのである。サラリーマンなら、よほどの大出世でもしない限りありえないことだ。本当にそうなるなら介護の世界の将来はバラ色だが、本当なのか?
グリーン成長戦略の人件費はどうなのか?
試しにグリーン成長戦略のほうも、おおまかに計算してみた。「TKC経営指標」の人件費比率は、
・自動車部分品・附属品製造業:22.6%
・風力発電設備を建設する「一般電気工事業」:28.9%
・太陽光パネル用部品をつくる「その他の電気機械器具製造業」:27.1%
と、平均すると25~26%程度。50兆円の25%は12.5兆円で、それを雇用創造140万人で割ると人件費893万円になり、年収として744万円とはじき出せる。これなら中堅サラリーマンの年収として納得がゆく。