内閣府の基準によれば、今回の景気回復は2012年12月に始まっており、はや2年近くになる。戦後の景気回復(拡大)局面の平均月数は33カ月であり、まだ余裕はあるように思われるが、今回については短命に終わるとの見方がある。その理由は、今回の景気回復局面の前の景気後退局面がイレギュラーであったからだ。
「直近(前回)の景気後退はわずか7カ月で終わった。期間として戦後2番目に短いものであり、不況が経済にもたらすリセット効果(企業の過剰在庫の調整、衰退企業の淘汰など)が十分に働かなかったことも考えられる」(銀行系エコノミスト)
さらに政府の景気の現状に対する公式見解である月例経済報告にも、不安なシグナルがともっている。月例経済報告は景気全般の傾向を基調判断としてわかりやすく示すことで知られているが、過去3回の景気回復(拡大)から後退局面の推移を調べると、ひとつのパターンがあることはわかる。同じ表現が3カ月すなわち3回以上続いた後に、弱めのものに変わると、その時点ですでに景気は天井を打ち、景気後退局面に入っているのだ(下表参照)。今回もまた今年1~3月に「景気は緩やかに回復している」と連続して同じ表現がなされている。また直近の9月の基調判断に用いられた「一部に弱さが見られる」等の表現が用いられた時には、過去3回とも景気後退は本格化している。
日本経済は今、景気回復と後退の端境期に直面している可能性もあり、各種経済指標に注視が必要といえよう。
(文=島野清志/評論家)
【過去3回の景気後退局面と基調判断】
・2000年11月(景気回復の天井):全体としては緩やかな改善が続いている
→同12月:前月と同じ
→01年1月:前月と同じ
→同2月:景気の改善はそのテンポが緩やかになった
・08年2月(景気回復の天井):景気はこのところ回復が緩やかになっている
→同3月:景気回復はこのところ足踏み状態になっている
→同4月:前月と同じ
→同5月:前月と同じ
→同6月:景気回復は足踏み状態にあるが、このところ一部に弱い動きが見られる
・12年4月(景気回復の天井):厳しい状況にあるが緩やかに持ち直している
→同5月:復興需要を背景に緩やかに回復している
→同6月:前月と同じ
→同7月:前月と同じ
→同8月:景気はこのところ一部に弱い動きがみられるが復興需要を背景に緩やかに回復している