こうした中で、これまで再増税一辺倒であった民主党も一転して延期容認に傾いているという報道も出てきており、野党も急な選挙で混乱状態に陥っている。何しろ民主党は先の総選挙から2年も経過するにもかかわらず、全選挙区の半分にも候補者を立てられておらず準備不足だ。日本維新の会との連携も不調であり、頼みの野党間での選挙協力も期待できず、あたふたと方針を変更している。日本経済にとっては、民主党を方針転換させただけでも政府の消費再増税延期は評価できる。自民党内の増税派も姿勢を変えるだろう。
そもそも、経済悪化の下での増税はセオリーでない。経済が悪い時には減税、良い時には増税が常識だ。何しろ4月の5%から8%への消費増税は、従来の消費増税と異なり、他の減税なしでの増税だった。引き上げ幅も3%と諸外国に比べて大きかったので、筆者の予想通り景気は悪化した。安倍首相は経済を重視しているので当然の判断ができるわけだが、再増税をしたい財務省に媚びて誤った内容を伝えるエコノミストやマスコミが多すぎる。そういった人たちの邪推を打ち砕く意味でも延期の意義は大きい。
●財務省が狙う景気条項削除
今、財務省と首相官邸との間では激しいやりとりが行われている。財務省は、1年半の再延長を認める代わりに消費増税法に含まれる景気条項を削除せよと要求しているのだ。景気条項とは、再増税の条件として判断時の景気を見極めることを明記するものだが、これを削除するということは1年半後がいかなる経済状況でも自動的に再増税される時限爆弾といえる。経済政策としては信じ難い内容だが、経済が生き物だということを肝に銘じながら、弾力的な対応ができるよう法整備をしておく必要があることはいうまでもない。