しかし、学年LINEに「A先生はこう言っていた」と投稿され、それを見たうちの1人は学校批判と受け取ったようだ。そして別の教員に「A先生はこんなことを言った」と告げたことで、校長の耳にまで届いてしまったのだ。
「どちらも、学年LINEがなく、同じような価値観を持った仲間内で会話していただけならば、問題にはならなかったことだと思います」(里中さん)
今や、相互監視に近い環境になっているという。
●持たせなければいいというわけではない
このようなことが日本全国どこの学校でも起こっているわけではないだろうが、特別珍しい事例でもないはずだ。保護者は、もし我が子をこの学校に通わせるのならば、どのように対処すべきかとの視点で考える必要がある。
里中さんは、今の子どもにとってLINEは連絡やコミュニケーションのツールとして欠かせないものになっているという。学年LINEで出た話題は、学年の半分の生徒たちが共有できるということだ。「昨日のあれ、面白かったね」といった何気ない会話が交わされ、そこに入れないことで、自分は仲間ではないと思わされる。
そして、LINEを使い慣れている人にとってLINEでつながっていない人は、一斉通知ができない、相手がメールを読んだかどうかの判別ができないなど、連絡を取るのが面倒な存在と感じる側面もある。そのため、徐々に気軽に連絡を取り合うグループから外されていくことになる。
こうした事情を考えると、単純に全面的な禁止をすればよいとはいえない。全面禁止は子どもにとって害がある、とすら感じられる。とはいえ、自由に使わせることにも不安は残る。なぜなら、大人のような面があるとはいえ、高校生はやはり未熟な存在だからだ。
使い始めのうちは、こまめにチェックをしたり、どのような使い方をしているのかを話題にするなど、子どもが暴走しないように気をつけたい。不快なことや疑問があった時に、身近な大人として頼られるような関係を築くことが何よりも大切だ。
「大学受験が終わったら使ってもよい」などという考え方を子どもに押し付けるのは甘い。ここで紹介したような問題がない高校だったとしても、大学に入っていきなり、これまで使っていなかったツールを上手に使いこなせるものではない。むしろ、親の目が届くうちに少しずつ使い方に慣れさせ、読んだ相手が不快にならない文章の書き方や、ネットだけでつながっている相手との話し方などを教えておくべきだろう。
(文=エースラッシュ)