高校生にもなれば、小さな子どもとは違って、嫌いな相手にもあからさまに嫌な顔を見せない。表向きは仲良くしておきながら、裏で悪口を言うような面がある。それがわかっているからこそ、学年LINEに入っていない生徒は、自分の知らないところでどのような会話が交わされているかが気になって仕方ないのだ。そしてその不安感は、誰にどれだけ「あなたの悪口を言っている人はいない」と諭されたところで消えることはない。「もしかしたら、陰で自分が話題にされているのではないか」と、不安を感じ続けることになってしまうのだ。
●ささいなことで処罰されるケースも
学年LINEに入っている生徒が、楽しく交流を深めているだけではないことも問題を複雑にしている。当然のように、人が多くいればトラブルが発生する。
「当校は比較的厳しいというか、過保護です。他校ではまったく問題にならないような事案でも処分対象になることがあります。その校風とLINEは相性が悪いようで、いろいろな問題が出ています」と、里中さんは2つの例を挙げた。
1つ目は、生徒同士の問題だ。学年の半分が加わっているだけに、さまざまなタイプの生徒が混在している状態だ。そのようなコミュニティでは、感覚の違いが大きなトラブルを生む。
ある日、学年LINEに投稿された画像について教員に相談した生徒がいたという。投稿されたのは、猥褻とまではいえない程度の下ネタ画像だった。遊び仲間同士でつながっているような場合であれば、笑いのネタとして流されていただろう。しかし学年LINEには、そうした画像に不快感を持つ生徒もいる。そして、真面目な生徒が相談先として選んだのは教員だった。
「相談されて、無視するわけにはいきません。結局、『SNSに不適切な画像を投稿した』という理由で、その生徒には処分がありました」(同)
教員から見て大きな問題と思えなくとも、学校が相談を受けたという事実と、厳しく処罰する校風が合わさった結果だろうと里中さんは言う。
そのような中、教員側も関係した事例があった。
「学校側と生徒側に溝が生じる事案があった後、教員の1人が生徒の味方をするような発言をしたのです。『おまえたちもつらいよな』『ああいうふうにやるのはいいと思ったぞ』という程度だったのですが、それを聞いた生徒の一部が、学年LINEに投稿したのです。それが原因で、その教員は校長から叱責されることになりました」(同)
教員が単純に意見を述べただけなのか、学校側の批判をしたかったのか、生徒の人気取りが目的だったのかはわからない。また、投稿した生徒が、学校を批判する教師を快く思っていなかったのか、あの先生は自分たちの味方だと広めたかったのか、その意図もわからない。