製品にビニール片が混入していた場合、ロット管理がしっかりと行われていれば、混入した製造日の分だけを回収すれば問題ありません。しかし、回収を実施した企業の社告などを見ると、回収の対象になっている製品は、複数の製造日にわたっている場合がほとんどです。
異物が使用原料に混入していたのであれば、原料単位での回収になるので、回収対象が複数の製造日にわたるのは理解できます。しかし、製造現場で使用していたビニール片が混入した場合でも、回収の対象は複数の製造日にわたります。これは、なぜでしょうか?
ビニールの破片やひもなどは機械設備で引き裂かれてしまうため、多くの製品に混入してしまう可能性があるからです。例えば、フライドチキンは、細かくカットした鶏肉に調味料や添加物を加えて最終的な形に成形し、表面に粉をつけて油調理されます。完成品の内部にビニール片が入っていた場合、成形以前の工程で混入したことになります。毎日、成形から包装まで一連の流れで行っているのであれば、特定の日に製造された製品だけを回収すればいいでしょう。しかし、製品回収には、もうひとつの事情があります。
「不良品」が一定の割合で再利用される
昨年、中国の食品加工会社が使用期限切れ鶏肉を使用していた問題が報道された際、使用期限が過ぎた肉を従業員が再び製造ラインに流す映像を見た人も多いと思います。それとは少々事情が違いますが、食品工場では、成形不良になった製品などを一定の割合で原料として再利用しています。加熱前の原料であれば、再利用しても問題はありません。しかし、現実には、加熱によってたんぱく質が変性したものであっても、品質に影響がない範囲で再利用されているのです。
それらは、工場の現場で「再生品」「リワーク品」「戻し品」などと呼ばれています。例えば、ペンシル型チョコレートの製造過程で、先端が折れたものを再び使用しても最終製品には問題がないでしょう。しかし、畜肉製品において加熱されたものを原料として再利用するのは、最終製品の品質を落とすことにつながるのではないでしょうか。
例えば、ウインナーは腸に肉を詰めて加熱しますが、加熱時に形が崩れてしまうと、不良品になってしまいます。そして、不良品のウインナーはひき肉のように細かく砕かれ、原料として再利用されます。赤ウインナーの場合、通常は表面だけが赤く染まっていますが、再生品を使用していると、中まで赤い肉が入っています。そして、筆者の経験では、再生品を使用した場合と、そうでない場合とでは、おいしさがまったく違います。
一般的に、「包装不良品」「軽量品」「半製品の繰り越し」などが再生品になります。また、過去には市場で売れ残った「返品商品」を包装し直して再利用していた事例もありました。
一度市場に出回った製品は品質管理をきちんと行うのが難しいので、再び原料として使用するべきでないと思います。例えば、製造ロット「1」にビニール片が混入したとします。「1」の再生品を、翌日の製造ロット「2」に使用し、「2」の再生品を製造ロット「3」に使用します。
そうなると、どこかで再生品を使用する流れを止めなければ、すべての製品にビニール片が入ってしまう可能性が出てくるのです。筆者は、回収の規模をできるだけ小さく、また製品をおいしくするために、加熱後の食材を翌日以降の製造で再利用する行為はすぐにやめるべきだと思います。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)