番組コメンテーターの元官僚・古賀茂明氏は、古舘伊知郎キャスターから中東情勢に関して問われた際に、その質問には答えず唐突に「テレ朝の会長、古舘プロジェクトの会長の意向で(番組出演は)今日が最後なんですけど……」と語り始め、さらにその背後に番組へ官邸から「政治的圧力」があったことを匂わせる発言を行った。これはまったく異例の事態で、論者からも、これを身勝手な「電波ジャック」として否定的にとらえるもの、反対にやむにやまれぬ「内部告発」として肯定的にとらえるものなど、さまざまな意見が示された。
この事件の直後、予想通り菅義偉官房長官もテレ朝もそろって、古賀氏に指摘された政治的圧力の実在を完全否定し、さらに菅氏はここぞとばかり、「(テレ朝は)事実にまったく反するコメントを公共の電波を使って放送し、極めて不適切だ。放送法という法律があるので、テレビ局の対応を見守っていきたい」と、放送法まで持ち出してテレ朝を強くけん制した。
ところが、しばらくして事件は思わぬ方向に展開する。毎日新聞が4月10日付朝刊で、昨年の衆議院議員総選挙前の11月26日、自民党がテレ朝に対して『報道ステーション』の番組づくりに偏りがあるので、「公平中立な番組制作に取り組むよう、特段の配慮」を求める内容の「要請書」を密かに送っていたことを暴露したのである。
テレ朝はこの時まで事実を秘匿していたが、公平ではないとして自民党が難癖をつけたのは「アベノミクス効果は富裕層や大企業に限定され、一般の国民に及んでいないかのごとく」(自民党の見解)報じた11月24日の同番組内でのアベノミクス検証で、自民党は、これが「特殊な事例をいたずらに強調」するもので、放送法の定める「放送の公平・公正」の趣旨に反するとして「要請」という形で一種の圧力をかけたのである。
テレビ局に介入する自民党
実際、このような公平・公正をよりどころとする自民党のテレビ番組への威圧は、いわば“お家芸”といっていいほどの歴史と、その中で磨かれた“したたかさ”を持っている。顕在化した代表的事例として、次の2例がある。