4月29日、安倍晋三首相が日本の首相として初めて、アメリカの上下両院合同会議で演説を行った。アメリカの議員の琴線に触れるキーワードを散りばめた演説は、党の区別なく絶賛された。
この演説は、日本のメディアでも大きなニュースとなったが、歴史的な出来事にもかかわらず、国民の関心度は低いように感じられた。それは、「政治的無関心」の空気が、日本全体を覆っているからではないだろうか。
インターネット調査会社のマクロミルが定点観測している「MACROMILL WEEKLY INDEX」のデータから、「政治関心度」を見てみよう。昨年11月第3週時点の65.9ポイントを頂点に減少傾向にあり、安倍首相の演説直前(4月第4週)では、56.4ポイントと9.5ポイント減少していた。
さらに、同データの「政治テーマ」(関心のある国の政策テーマ)を見てみると、「外交・安全保障政策」は今年2月第1週の35.9ポイントから減少傾向にあり、4月第4週で24.1ポイントと、実に11.8ポイントも下げていた。
政治的無関心が顕著に表れたのは、2014年12月に行われた衆議院議員総選挙だ。小選挙区の投票率は52.66%と、戦後最低を記録した。4月に行われた統一地方選挙の投票率も、前半戦は38の道府県で過去最低を記録、後半戦も市長選、市議選、町村長選などで過去最低が相次いだ。
安倍政権が長期政権となる可能性が高まった一方、国民の政治的関心はさらに低くなっていきそうだ。安定的な政権が誕生したから関心が低くなったのか、関心が低くなったから安定的な政権が誕生したのか。「卵が先か鶏が先か」のような話になるが、いずれにしても、政治的関心の低下は権力チェックの緩みにつながり、政治的暴走を許しかねない。
我々国民は、安定的な政権の時こそ、政治的関心を高めるように努力しなければならないのだ。
さて、ここでもう一つ興味深い統計データを見てみよう。アメリカのピューリサーチセンターが4月7日に発表した、アメリカ人の日本に対する印象の調査である。
「第二次世界大戦中の行いについて、日本は十分な謝罪をしたか」という質問について、「日本はすでに十分な謝罪をした」が37%、「謝罪は必要ではない」は24%で、合計61%のアメリカ人が、日本について「十分な謝罪をした、あるいは謝罪は必要でない」と答えているのだ。
普段、我々は中国や韓国が「日本は謝罪していない」と主張するニュースに触れることが多いため、アメリカ人も同様の考えをしていると思いがちだ。しかし、実際はそうではないのである。安倍首相の歴史的演説によって、この数字がどのように変化するか、注目だ。
いずれにせよ、今回の安倍首相の訪米によって日米関係の潮目は変わった。今後の政治の動きに、私たちはこれまで以上に関心を持つべきである。
(文=鈴木領一/ビジネス・プロデューサー)