サウナ浴をすると長生き&病気罹患率が低下!高血圧や心不全の治療にも有効
「サウナは大好きだが血圧が高い(心臓が悪い)ので、サウナ浴は控えている」という人は少なくないが、「サウナ浴が心臓病や高血圧によくない」と指導する医師の論拠も多分に観念的である。サウナ室内は90~100℃と高温なため、「心臓や血管に刺激を加える」「暑熱が刺激になって、副腎髄質よりアドレナリンが分泌されて血圧を上げる」という理屈のようである。
確かに、サウナ浴中は酸素消費量も増加し、心拍数も50~100%ほど増加して心臓の負担になる。しかし、鹿児島大学病院では、同大倫理委員会の承認のもと、2000年4月より心不全の患者にサウナ療法を施している。
同大病院心臓血管内科の鄭忠和名誉教授は、「心不全の症状を大きく改善し、同時にリラクゼーション効果をもたらす確実な治療法だ」と喝破されている。鄭氏は、「サウナが優れている点は、湯船での入浴と違って体にかかる水圧の負担がなく、温熱だけの効果が得られるところ」とも指摘されている。「60℃の室内に横になり15分を限度にして温まる」という方法で、それにより深部体温が1℃上昇するという。1日1回、週3回というのがオーソドックスな治療法としている。
血圧は、塩分の摂取過多で血液中の塩分、水分(塩は水を引き寄せる性質から)が多くなることで血液の全体量が増加し、心臓はより力を入れて押し出すので上昇する。また冬の寒いとき、血管が縮んで血流が悪くなることでも上がる。サウナは多量の発汗で塩分と水分を排出し、体が温まることで血管が拡張する。つまり、高血圧の要因を排除することになる。
高血圧性心臓病、心筋梗塞、心臓弁膜症、拡張型心筋症など、多くの心臓病が悪化すると心不全に陥る。その結果、心臓からの血液拍出量が減少し、腎血流量の減少、腎機能低下を惹起して尿の出が悪くなり、下肢からのむくみをはじめ、胸水・腹水などが全身に及ぶ。つまり心不全は、体内の水分を排泄できないという症状である。
その点、サウナで発汗すると心臓の負荷は軽くなる。心不全に対するサウナによる温熱療法の効果のメカニズムとして、温熱により末梢血管の内皮機能が改善する点も挙げられている。
病気の罹患率や死亡率が低下
2015年2月23日、アメリカ医師会のHPに、フィンランド在住の42~60歳の男性2315人を対象にした、「サウナに入る回数と病気の罹患率や死亡率との関係」についての研究論文が掲載された。
それによると、サウナ浴の回数が多い人ほど、心臓病死だけでなくあらゆる病気で死ぬ確率(全死亡率)も低いことがわかる。「心臓突然死のリスク」は、利用時間「1分未満」に比べて「11~19分」「19分以上」はそれぞれ「7%減」「52%減」であった。
もっとも、サウナ浴に健康効果があるといっても「1回に何分」と決めて、暑さを我慢しつつがんばることはしないほうがよい。暑くなったらサウナ室を出て、水風呂に入るかシャワー浴をする。これを繰り返し、「やってみて、気分がよい、調子がよい」ことを前提にサウナ浴をすべきだ。
ある程度以上の心臓病や高血圧の持病のある人は、「生兵法は、大怪我のもと」だ。きちんと主治医の指示に従うべきである。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)