身体の歪みが全身にさまざまな症状を引き起こすことは、よく知られています。
身体の歪みは頭痛、首や肩の痛みやコリ・手足のしびれ・神経痛・腰痛などの原因となります。これは主に背骨の歪みやズレに起因するとされています。頭蓋骨からつながる、いわゆる背骨は頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨1個、尾骨1個、計26個の骨が積み木のように重なっているので、いろいろな動きができる半面、歪みも生じやすいのです。
それぞれの骨には脊髄があり、脊髄神経も出ていますので、身体の歪みで重要な神経が圧迫されて重篤な症状が出たり、歪みを補正しようと筋肉が無理に働くため、痛みやコリを発生させます。
身体を歪める原因は、同一作業やスポーツによる偏った姿勢、ケガや事故、内臓疾患などさまざまですが、噛み癖や噛み合わせなど、口の状態が原因になることもあります。ブリッジ、入れ歯、矯正、インプラントなどの歯科治療が原因になることも多いのです。
上図は右噛みの人の骨格の歪みを表したものですが、偏った噛み方を長く続けると、下顎が偏り、それにつられて頭が傾きます。頭は5~6kgと重いので、その影響は首の骨、背骨、骨盤に及び、やがて全身が歪みます。歪みは単に左右に傾くだけでなく、前後左右に捻れも生じますので、治りにくい症状を引き起こすのです。
入れ歯でひどい頭痛と目まい
偏った噛み方の原因は、痛い歯があり、そこを避けて噛む、歯が抜けたままになっているので残った歯だけで噛むといったわかりやすい場合のほかに、歯列矯正やブリッジ、入れ歯、インプラントなどの歯科治療でも起こります。これらの治療は複数の歯を一度に治療しますので、噛み方が偏りやすいのです。
一例として、88歳の女性の症例を挙げます。この方は「入れ歯が合わないのでつくり直したい」が主訴でしたが、頭痛と目まいがひどく、常に付き添いの方に支えられての来院でした。それまで入れていた入れ歯は口の中には収まるけれども、噛み合わせの状態はひどいもので、偏った噛み方を固定してしまうような代物でした。