今の社会は「M&A」と「株式会社」のおかげで回っている…その誕生秘話と超基礎知識
いやいや、そのような弱肉強食のやり方は日本では馴染まない。我々はすべての人たちを尊重するということで、「対等合併」や「経営統合」という名前で一緒になることがあります。それを聞いて素晴らしいとほめたたえる人もいます。
しかし、対等合併がうまくいくのはレアケースです。いろんな人の意見を聞きすぎると何をしたいのかがぼやけてきますし、個々のやり方を尊重しすぎると、それを維持するためだけでなく、帳尻を合わせるための仕組みづくりにかえってコストがかかります。3社が対等合併をした結果、それぞれのコストが1で、3つ合わさって3になるはずが、4に増えてしまった、などということが現実に起こっています。
その一方で、買収されることによって会社の利益が増え、従業員の雇用も安定したという例もあります。たとえば日本電産という会社の創業者である永守重信さんは、これまでに60社以上を買収してきましたが、すべての会社が黒字化を果たしたといいます。また、永守さんは買収した会社の、リストラをしたことがないそうです。
一般論として、M&Aは非常に難しく、成功するのは多く見積もっても2~3割だといわれています。しかし、M&Aが失敗するのは、つまり先ほど例に挙げたようなマネジメントの問題であり、M&Aという取り組み自体が悪いわけではありません。それどころか、M&Aとそれを支える考え方は現代に生きる私たちの生活を支える仕組みなのです。前置きが少し長くなりましたが、今回はこの点について掘り下げていきたいと思います。
M&Aとは?
多くの人にとって、会社は自分の生活を支える経済的な基盤であり、自己実現の手段でもあります。名の通った会社に勤めていて近所からも一目置かれていたのに、勤務先の会社が売りに出されていると新聞に載るようなことがあると、近所での体面が保てないと思う人もいるでしょう。だから、会社に値段をつけて売り買いの対象にするという発想は、大きな違和感があるというのはわかります。しかし別の見方をすれば、会社は法律に従って設立される仕組みであり、器にすぎません。そもそも会社は人々が豊かで幸せになるための道具なのです。
会社を売り買いすることに否定的な人たちも、株式投資を自分で積極的に行い、周りにも勧めていることがあります。しかし、これはまったくおかしな話です。会社を売り買いするという意味においては、株式の上場もM&Aも同じだからです。