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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

民泊、マンションでごみ放置や大騒ぎ問題が深刻化…国は民泊推進、その課題と論点とは

文=牧野知弘/オラガHSC代表取締役

 これに手を挙げたのが、東京都大田区や大阪府だった。どちらのエリアも訪日外国人の大量来日で宿泊施設は払底しているため、苦肉の策としての民泊推進だった。その代わり、条件は厳しく、宿泊日数を6泊7日以上にするなど、現実的には機能しにくい内容のものに仕立てた。

 現実に機能するかどうかは別として、ともかくも民泊拡大に取り組んでいくという姿勢を示したかたちにしたのだが、ここにきて事態は急変する。民泊自体をひとつの宿泊システムとしてもっと広範囲に認めていこうという動きが急速に広がっていったのだ。

 具体的には、民泊を旅館業法自体の改正をして積極的に位置づけようという動きや、省令の改正で「簡易宿所」として広範囲に認めていこうなどといった動きが顕著になってきた。おそらくこの1、2年の間で、民泊は全国で広範囲に認められる可能性が高いとみられる。

 この背景には、全国で急増している空き家問題がある。空き家は今や地方だけの問題ではなく、たとえば東京都心部には、賃貸マンションを中心として相当数のマンション空き住戸が存在している。

 一昨年、日本創成会議が提議した「消滅可能性のある自治体」に指名された豊島区には、ワンルームマンションの空き住戸が池袋や大塚といった駅周辺に大量に存在する。こうした空き住戸対策に民泊は大いに効果を発揮することが期待されるのである。

セキュリティ面での限界

 民泊の負の影響としては、既存のホテル・旅館の経営を圧迫するという点だけではない。今のところ民泊を事業として営む業者に対して、あらかじめ「登録」または「届出」をさせ、むやみな参入を封じ込めようとしているが、民泊は周囲の住民とさまざまなトラブルを引き起こす可能性が指摘されている。

 すでに、湾岸エリアのタワーマンションなどでも、外国人の所有者がAirbnbなどに登録して訪日外国人に開放することで、住民とのトラブルが後を絶たなくなっている。

 トラブルの内容としては、複数の外国人が部屋を出入りして防犯上心配というもの、ごみ出しルールなどが守られず、なかには共用廊下などに放置される、部屋内やマンションのロビーラウンジなどで大勢の外国人が大騒ぎをする、といったものだ。あるタワーマンションでは、ゲストのために用意した宿泊用の部屋を長期間にわたって借り続け、これを民泊として運用して稼いでいる猛者まで現れているそうだ。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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