40歳代後半から50歳代の方からのご相談を受けると、高い確率で質問されるのが親の介護について。その多くは、「親が要介護状態になったら、どうすればよいか」といった実際に介護を行う以前の、漠然とした不安感からくるものなのだが、それが現実のものとなったとき、そしてそれが「多重介護」であった場合、どうすればよいのだろうか?
50歳代前半で6割が介護を担う可能性大
多重介護とは、高齢者や障害者など複数の人を同時に介護すること。たとえば既婚者であれば、自分と配偶者の両親が存命なら、そのうちのひとりが要介護になる確率は50歳代前半で6割、50歳代後半で9割ともいわれている。
実際、全国60歳以上の男女1,000人に対する調査では、介護経験者に直近で介護をしていた時期を聞いたところ、全体で22.6%が「現在も介護をしている」と回答した。これを年代別でみると60代は24.7%、70代以上は15.1%が、現在も進行形で介護をしているという。
仮に、介護者にきょうだいがいれば担い手も複数になるが、夫婦がひとりっ子同士で、さらにそれぞれ遠方に居住しているともなれば、問題は単純ではない。
介護者の4人に1人が多重介護を抱えている
多重介護を行っている人は、現在約20万人。10年後には5割増加するという推計データもある(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2012年推計)」等、各種統計を基に、株式会社東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部渥美由喜氏が作成)。
また、10年に一般社団法人日本ケアラー連盟などが約2万世帯に実施した調査でも、介護者の4人に1人が複数介護との結果もある。このような多重介護のケースは今後も増加する可能性が高く、とりわけ昨今の非婚・少子化の状況を鑑みると、ひとりっ子の“おひとりさま”による多重介護が増えることは間違いない。
頼りにできるきょうだいがいないひとりっ子は、「なんでも一人」という状態に慣れ親しんでいるがゆえに、介護も一人で抱え込んでしまう傾向が強いという。
実は、我が家の娘もひとりっ子。夫は次男、私は長女で、きょうだいは複数いるため、ずっと甥っ子たちとの交流を欠かさず、将来に備えて、「困ったことがあれば、きょうだいのように助け合うように」と言い聞かせてきた。