自己破産したその日に人間関係が激変…経験した私が明かす「地獄と脱出・人生再建術」
誰も予想すらしなかった新型コロナウイルスの感染拡大。個々人の努力ではコントロールできない、まさに災難です。人生の一時撤退を選択肢のひとつとして考えざるを得ない方々も少なくないと思います。そこで、自己破産経験者である私からのアドバイスを、法律家とはまったく違う観点からお伝えします。結論は「破産しても人生再建は誰でも可能」です。破産は人生再建の手法のひとつですから。
【筆者の破産に関する説明動画はこちら】
前回記事『破産1.5回→起業、今は普通に生活の私が断言、「自己破産しても人生再建は可能」』に引き続き、今回は破産手続きの具体的準備内容と、弁護士が債権者に受任通知を送付した直後に激変する人間関係を、経験談も交えてお伝えします。
人生再建に向けた前向きなマインドセットが必要ですが、必ず人生最大で想像以上の「心の折れ」を経験します。また自殺も選択肢に浮かびます。それらを乗り越える具体的方法や考え方を今回はお伝えします。
1.自己破産手続きの準備作業
私、辛酸なめ過ぎ太が25年前の阪神・淡路大震災で人生が大転換し、その後に体験した内容を参考にお話を続けます。
自己破産の申し立てには、債権・債務の正しい把握が必要です。お金に追われると、どこからいくら借りたのか正しい記録がない状態に陥りがちです。むしろ逆に売掛金、買掛金、会社の借入金、個人的な借入金も明確にしておく必要があります。その資料に基づき申し立ての資料を作成し、代理人が受任通知を送付します。内容については先方の意見も聞き取り精査していきます。
以上のことがわからないと始まりませんので、しっかりと自覚しておいてください。現金を動かすのではなく、口座内での資金移動にすれば、あとで思い出すことが容易になります。将来を開くためにも、頭の隅に意識しておいてください。
2.想像を超える人間関係の大変化と対策
私が破産したという情報は、その日のうちに業界中に広がりました。その日に想像以上の件数の留守電が携帯電話に入りました。「明日の朝までに何千万円用立てたら良いのか」という伝言もありました。うれしかったですが、借金が増えるだけで根本的解決にはなりません。伝言はさまざまでした。「困ったらいつでも相談に来い」と普段から言ってくれていた方が、「うちの分だけは裏で払ってくれ」と頼んできました。思わぬ人が心から心配してくれて励ましのメッセージをくれました。今までとはまったく違う本性を露骨に見せた人も少なくありませんでした。自宅前にベンツが張りついた時期もありました。債権者のひとりが依頼したのです。人なんて本当にわからないもので、自分の理解の浅はかさを思い知りました。自業自得ですが、破産によってすべてが変化しました。
対策としては、新しい人生を歩むために過去の人間関係はいったん整理することです。人生を変える方法は「環境=住むところを変える」「人間関係=付き合う人を変える」、そして「習慣を変える」の3つです。あなたが想像するより、世界はずっとずっと広いです。安心してください。新しい世界が待っています。
余談ですが、一番の驚きは所轄税務署がもっとも早く売掛金を差し押さえたことでした。考えれば毎年の決算書で売掛金が発生している先はわかりますし、その素早さはプロフェショナルでした。その後の人生でも良くも悪くも日本の税務署の優秀さを実感しましたが、その経験は機会があればお伝えします。
3.「折れる心」の対処法
破産すると、必ず自分の存在価値がないと思いがちになります。自分にとって人生最大の望まない出来事、自己破産の翌日も、誰も気にせずに世間は普通に動いています。大震災の際に全員が将来や現実に嘆いた光景とはまったく違います。「世界中で嘆いているのは自分だけ」「誰も気にもかけてくれてない」と思い込みます。将来には不安しかありません。
私が破産した23年前は手元に残せる現金はもっと少なかったので、10円単位の生活を強いられました。普通の神経なら誰でも心が折れます。心を支えるために古い友人に連絡しても、「もうかかわりたくない」という本音が見え見えの冷たい対応をされるとさらに落ち込みます。家族離散になれば自暴自棄にもなります。すぐ金になる裏稼業に就きやすくなりますが、ここは人間として踏ん張りましょう。
また、鬱状態からの自死の誘惑にとらわれます。うまくいかなくて苦しい日が続くと、誰かが耳元で「死んだほうが楽だ」と囁くのです。私も身の周りの人が自死するのを経験しましたが、結論からいうと何も解決しません。問題と悲しみが増えるだけです。私の場合は生命保険金が会社受取となっており、結果として家族に一銭も渡りません。債権者への配当原資が増えるだけでした。債権者のなかには「命に代えても払え」と考える人もいるかもしれませんが、お金のために責任を取って死ぬのは日本人だけです。私が今まだ生きながらえているのは申し訳ないですが、そういう判断でした。
必要なのはそんな状態への対処方法を持つことです。人によってさまざまでしょうが、一番必要なのは、明確な根拠がなくとも大丈夫だと言ってくれる人です。それは身近な人がベストですが、そうはいきません。僕の場合は、お墓参りをして、死んだおばあちゃんが励ましてくれました。墓前で手を合わすと、なぜ心か落ち着きました。対象は違っても、信仰の習慣があればそれは素晴らしいと思います。神社でも良いと思います。
また、私は日記を書く習慣があり、白紙のノートに反省と将来の夢を書き込みました。昔の楽しかった家族旅行の写真を複数葉いつも忍ばせて、ひとり眺めました。必ずあの日を取り戻すとつぶやきながら。これは本当に将来で実現できます。眠る前、将来に実現させる具体的シーンを思い浮かべるのも、少し心を楽にしてくれます。これらは「潜在意識の活用」と呼ばれています。ほかには一人カラオケ、「泣く」ことは涙で心を軽くしてくれます。最善は「笑う」ことです。映画、お笑い、マンガ、なんでも構いません。涙と同じく笑いも心を軽くして将来の夢をくれます。試してみてください。
まとめ‐2 絶望は必ず希望を連れてやって来る。Crisis brings opportunity.
何度も書きますが、どうなっても誰にでも人生再建は必ずできます。大丈夫です。
結局は自分自身との闘いです。自分というのは、諦めを勧める最大の敵ながら、絶対に裏切らない自分の永遠の応援団でもあります。失敗から学び、新しい人生を開いていきましょう。
次回は、お金がなくても幸せを実感できる方法や自分の可能性の見つけ方を解説します。
(文=辛酸なめ過ぎ太/人生再建アドバイザー)