確定申告でミス→数年後に税務調査で判明し“延滞税”請求された!訴えたらさらに増額
元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きじゃない権利は「不輸不入の権」です。
税金を滞納すると、「延滞税」という利息がかかります。その年利は現在、9%ほど。金融機関からの借り入れ利息と比較すると割高です。
また、滞納をしなくても延滞税がかかることがあります。これは、税務調査によって申告漏れが見つかり、所得が増えた場合です。
税務調査は直近の1年分に対してのみ行われるのではなく、基本的には5年、短くても3年分が対象です。では、5年前の申告内容に誤りがあった場合は、5年分の利息を請求されるのでしょうか。
実は特例があって、5年前の申告漏れでも条件を満たせば延滞税は1年分となります。ただし、不正があればその特例は適用されません。複数年分の延滞税は、納税者にとって、とても大きな負担となるでしょう。今回は、延滞税について争われた事例を紹介します。
会社員のAさんは、提出した所得税の確定申告書に誤りがあると税務署から連絡を受け、修正申告書を提出し、追加で所得税を納めました。しかし、延滞税には納得がいかず、放置していました。すると、督促状が届きましたが、Aさんはそれを無視しました。とはいえ、ずっと無視していても仕方がないので、不服を申し立てることにしました。
ここで、延滞税のルールを確認しておきましょう。
「修正申告書を提出した場合において、納付すべき税額があるときは、延滞税を納付しなければならない。延滞税の額は、納付すべき国税の法定納期限の翌日からその国税を完納する日までの期間の日数に応じて計算した額とする。
また、修正申告書の提出において、偽りその他不正の行為により国税を免れた場合を除き、延滞税の課される期間は、法定申告期限から1年を経過する日の翌日から修正申告がなされた日までの期間を除かれる」
税金のルールの基本となる国税通則法には、「修正申告をしたら延滞税を納めなさい。その金額は日数で変わりますよ」とあります。さらに、不正がなければ、たとえ5年前の申告漏れだったとしても、延滞税は1年分だけでよいとされています。
また、国も鬼ではないので、火薬類の爆発、交通事故その他の人為による異常な災害又は事故により、納付すべき税額につき、申告をすることができず、又は納付することができない場合は、延滞税を免除するとしています。
Aさんは会社員です。源泉徴収票の読み方がわからず、「給与所得控除後の金額」を年収だと勘違いし、ここに雑所得を加えて確定申告をしてしまいました。誤りに気づいた税務署の担当者はAさんに連絡し、修正申告書を慫慂(督促)しました。
その後、修正申告をすると、延滞税という利息がかかると聞かされ、Aさんは怒り、こう主張しました。
「税務署長は、確定申告書を受理したあと、速やかに誤り見つける責任を負っている。そして、容易に発見できる誤りがあれば、速やかに是正指導するべきである。是正指導事務が遅延したことによる遅延は、人為による災害又は事故に該当し、延滞税を免除できるはずだ」
自分がミスをしたのに、それをすぐに連絡してこなかったのは税務署が悪い、人為による災害に近いので、延滞税はかからないと言っているのです。論理的にはそんなことは認められないと思いますが、訴えがあった以上は検討されます。
まず、明文化されている「人為による異常な災害又は事故」からは、ガス爆発、交通の途絶、飛行機の墜落、船舶の沈没といった典型的なケースが読み取れます。しかし、国は寛容です。「税務職員の誤指導や申告書提出後における法令解釈の明確化、申告期限時における課税標準等の計算不能、振替納付に係る納付書の送付漏れの場合も含まれる」としています。
それでもAさんの主張は認められず、延滞税は免除されませんでした。それどころか、自分のミスを他人のせいにしている間に延滞税は少し増え、Aさんは訴えなかった場合より、損をしました。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)