70代の7割がネット利用?「老人」像の崩壊、ネットもお金もガンガン使う巨大な消費者群
総務省の2018年発表の情報通信白書では、60代後半のインターネット利用率が69%となっており、現在では70代の約7割がネットを利用していると考えられます。今後もネットを利用するシニアはますます増えて、大きな市場となることが予想されます。
ウィンドウズ95が発売された1995年、今から25年ほど前から企業ではIT化が急速に進み、誰もがメールなどを否応なしに使うようになりました。年金受給年齢の65歳の人は、当時40歳だったことになり、ネットを使いこなしてきた世代です。
また、2020年代に3Gが停波される予定のため、「ガラケー」とよばれる従来型携帯電話が使用できなくなり、多くのシニアがスマホを利用し始めると予想され、こうした動きもネット利用拡大の要因となるでしょう。
FAXや固定電話などがメインだったアナログな時代と、携帯電話やメールがメインのデジタルな時代の両方を知っているシニア世代は、ネットが当たり前だと感じているミレニアム世代よりもその便利さを理解しています。そのため、貪欲にネットを使いこなそうと考えるかもしれません。
以上から、企業側は、以前のシニア像を大きく刷新してビジネス戦略を練る必要があるといえます。この世代は人口が多く、子育てにお金がかかる30~40代よりも購買意欲が高いと考えられ、便利なサービスや商品があれば積極的に購入するかもしれません。
たとえば、旅行サイトのトリップアドバイザーなどを使いこなし、ホテルを予約してレビューを書き込むことなども考えられます。
企業側が意識すべきことは、シニアは若者とは興味・関心がある事柄が違うという点です。たとえば、健康に対する不安を持っているとすれば、保険や健康食品、健康器具、手軽なスポーツなどに興味を持つでしょう。老後資金に対する不安があれば、貯蓄、資産運用、相続について積極的に情報収集をするでしょうし、将来の孤独に不安があれば、地域社会で交友関係を広げたり、家族とのつながりを考えて孫への贈りものをして喜びを得たりするでしょう。または、持て余している時間を埋める商材などもヒットするかもしれません。
企業は「シニアはネットを使う人が少ない」という漫然としたイメージを変えない限り、10年先、20年先のビジネスを考えることはできないはずです。金銭的に余裕があるシニアをターゲットとした良質で高価なサービスや商品がヒットする時代になるということです。
(文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役)
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