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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

コロナでの事業収益減少を補償してくれる保険…あいおいニッセイ同和「PL保険」に注目

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
コロナでの事業収益減少を補償してくれる保険…あいおいニッセイ同和「PL保険」に注目の画像1
あいおいニッセイ同和損保 HP」より

 緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの終息はいまだ目処がつかない状態です。行政による支援制度もあるとはいえ、「まったく足りない」「先が読めず、踏ん切りをつけたい」と倒産に追い込まれたり、廃業を決断する事業主も少なくありません。こうした事態に対応できる保険が、あいおいニッセイ同和損保のPL保険です。

 PL(Products Liability)保険の正式名称は、生産物賠償責任保険です。「生産物」とあることからもわかるように、企業が販売した商品や提供したサービスなどによって、他人にけがをさせたり、物を壊したりしたことにより発生した法律上の損害賠償責任を補償する事業者(法人)向けの保険商品です。

“法律上”とわざわざ明記するには、理由があります。残念なことに商品を購入した人に悪意がある場合があるからです。実際の事件でもありましたが、商品自体にまったく問題がなかったにもかかわらず、購入者がわざと商品に針を混入させて企業を訴えたケースもあります。

 そうしたケースと一線を画し、たとえば企業側が販売した飲食物がもとでお客が食中毒になった場合や、販売の際に誤った使用方法を教えたり、製造した商品の欠陥が原因でお客がケガをした場合、防水工事の欠陥が原因でお客宅の内装や家財に損害を与えた場合などと、企業側の問題で被害が起こったケースも対象となります。

 しかし、企業が「誠実に対応したい」と思っても、被害額や被害を受けた人数によっては支払えないケースもあります。そうした場合に備えて発売されたのがPL保険です。

 同保険は、各損害保険会社から発売され、詳細や補償内容は若干違います。しかしベースとなる補償は以下内容を標準とするものが一般的です。

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「指定感染症」も補償対象

 さて、今回の新型コロナによる被害で、保険業界でも話題となったのが、あいおいニッセイ同和損保のPL保険にオプションとしてセットできる「食中毒・特定感染症利益補償特約」です。

 この特約は他社にもあります。食中毒を起こしたり、施設における特定感染症の発生により休業した場合や営業時間や業務などに制限がかかった場合、営業利益および収益の減少を防止するためにかかった費用(人件費も含む)を補償することを目的として開発されているのは各社共通です。

 では、なぜあいおいニッセイ同和損保の商品だけが、新型コロナによる利益減少などを補償しているのでしょうか。それは同社商品だけが「指定感染症」も補償対象としており、新型コロナが保険対象施設で発生した場合を対象としているからです。

 実は現時点では新型コロナは「特定感染症」ではなく「指定感染症」であり、2020年1月28日に閣議決定されました。特定感染症とは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で定められた1類から3類の感染症です。一類にはエボラ出血熱、二類にはSARS、三類はコレラ、O-157、腸チフスなどが分類されています。

 一方、指定感染症は一類から三類に分類されていないものの、それに準じた感染症であり、発生すると全件保健所などに届けられ、原則、入院などの対応の必要性が生じます。1年を限度として政令で指定されます。

 ただ、あいおいニッセイ同和損保の商品も、なんにでも保険金を支払うわけではありません。たとえば契約した企業が新型コロナの被害をでっち上げた場合などは、支払われません。

対象となる業種、支払い条件

 PL保険の対象となる業種ですが、飲食業、劇場・映画館、デパート、化粧品店、食料品製造販売業者などに加え土木建築業者、電気・ガス器具製造販売業者、電気関係装置施工業者、機械修理業者、各種機械器具据付業者などの工事請負業者も含まれます。

 さらに、この特約に加入できる業種は、食品製造業・食品販売業、一般食堂・料理店、ホテル・旅館などとなっています。保険支払期間は10日、15日、20日、1カ月、2カ月、3カ月から選択します。

 支払い条件としては、保険の対象施設で新型コロナの感染が発生し、都道府県知事に医師からの届出があった場合、もしくは保健所などによる消毒などの措置が実施された場合になります。加入窓口は、あいおいニッセイ同和損保を取り扱う代理店となりますが、PL保険は法人を対象としているため、個人を得意とする代理店では取り扱ったことがないケースもあります。よって、最寄りの営業店に問い合わせてみるのもといいかと思います。どんな保険でも同じですが、加入を検討する際も契約後も、少しでも疑問があれば、何度も保険会社に聞くべきです。

 保険料ですが、業種によって提供する製品やサービス売上高などが違うため、保険料が一律というわけではありません。

 同社では新型コロナの感染拡大を受け、4月以降、この特約の引受にあたっては、企業の業種や感染予防対策などを総合的に勘案のうえ、お客さまのリスクに応じた引受を決めています。

 参考までに新型コロナ感染拡大前の特約の保険料水準をご紹介すると、一般的な飲食店の場合、支払期間1カ月、保険金額を1,000万円に設定した場合の年間保険料(一時払い)は1万6,330円でした。

 今後、新たなウイルスや細菌が発生し、パンデミックを起こす可能性もゼロではありません。PL保険は企業のカスタマイズ性の強い商品ですから、「加入して安心」というのではなく、自社が抱えるリスクを常に想定することが不可欠です。実際、私がリスクに関する外部委員としてかかわっている企業は、コロナ自粛以降、これまで以上にリスクの見直しを図り、弁護士、医師をはじめとする複数の各専門家委員から全方位的にチェックを受けています。

「リスクに対して、人員もコストもかけられないからやらない」というのではなく、損保会社に包み隠さず相談をするということも、これからの企業の生き残りには不可欠でしょう。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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