メディアでは、すでに平成バブル時に匹敵するほどの値上がりを見せている日本の不動産の現状について、「上がりすぎた」「もうバブルが弾けるのではないか」といった論調が強くなっている。
たしかに、最近の都内ではキャップレートが3%前半などという事例が珍しくない。長く不動産投資に関わってきた筆者からみても、何やら最近の取引は壮大なチキンレースが行われているようにも映る。
一方で、海外投資家による日本の不動産買いにはブレーキがかかるどころか「加速」している。彼らから見れば、まだまだ日本の不動産には「余力」があるということだ。「余力」という意味は、日本がこれから世界的にも大いに成長するだろうとか、オフィスやマンションの需要が大量に発生するだろうなどということとは関係ない。
彼らが見ているのは「イールドギャップ」というやつだ。
現在、政府と日銀の大幅な金融緩和政策の恩恵で、非常に低い金利での資金調達が可能となっている。また、国内ではもっとも安全な債券といわれる日本国債のレートは、10年物利回りで約0.05%という「豆粒」のような水準にある。
投資の世界では、自分の投資しようと考えている対象の利回りが、調達金利や世の中でもっとも安全性の高い金融商品の利回りに比べてどのくらい高いレートであるかを、投資する際のリスク判断材料としている。
この理屈でいえば、たとえば東京のオフィスビルを利回り3%で買ったとしても、日本での調達レートはおそらく1%以下。また日本国債のレートと比較すれば2.95%ものリスクプレミアムが乗っていると判断するのだ。リスクプレミアムとは、国債に比べたリスクと言い換えてもよいだろう。また調達金利との差額も2%以上の差があると判断して、「この投資は安全、大丈夫」とするのである。
アービトラージ
このリスクプレミアムの幅は、そのときどきの世界情勢や今後の見通しに応じて「伸びたり縮んだり」する。現在はリスクプレミアムに対して「ポジティブ(積極的)=リスクプレミアムは小さくてよい」という状態にあるのが、日本に対する彼らの見方になる。
彼らがどうやって儲けるのかといえば、3%のキャップレートで仕入れた東京のオフィスビルの権利を、数カ月から2~3年後までの間に、キャップレート2.5%で買う投資家が出てくるとみて、その投資家に売却(出口=エグジット)することで利益を確保しようとしているだけなのだ。