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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

マンション、見かけ上の安さに騙されるな!専有面積圧縮や耐震性&遮音性ダウンで最悪も

文=山下和之/住宅ジャーナリスト

たった5平方メートルの縮小でもこんなに使い勝手が悪くなる

 専有面積が5平方メートル程度狭くなってもそんなに影響はないだろうと思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。5平方メートルといえば畳にすればほぼ3畳分に匹敵します。それまでは15畳だったLDKが12畳になってしまうのです。15畳ならゆったりとしたソファに大きめのテーブルを設置できたのが、どちらかを我慢しなければならなくなります。

 しかも、間取り図上の畳数を多くするため、LDKと玄関ホールをつなぐ廊下の玄関側にドアを設置して、廊下のような細い部分もLDKに含めて表示するような姑息な手段を用いるケースもあります。このドアのある0.5畳から1畳程度の部分は実質的にリビングなどとして使えないので、一段と使い勝手が悪くなります。

 もちろん、個別の部屋の広さを狭くするケースもあります。8畳を6畳にすると、これはもう主寝室にはなりません。ツインのベッドを置くとドレッサーなどが入らなくなります。入ったとしても足の踏み場のない状態になるでしょう。

バブル時には50平方メートル台の3LDKが平気で売られた!

 6畳を4畳半にすると、シングルベッドを置くだけで一杯いっぱいになってしまいます。それ以下に狭い部屋をつくると、そこはもう居室というよりは、納戸としてしか使いようがない部屋になってしまいます。「そんな無茶な間取りなどあり得ない」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、不動産業界はいざとなれば、そんなことも平気でやってしまう体質が残っている業界なのです。

 古い話になって恐縮ですが、1980年代のバブル時から90年代にかけてはとんでもない間取りがありました。地価が高くなりすぎて、庶民が買えるような価格帯でマンションを供給するためには、専有面積を大幅に圧縮するしかなかったのです。その結果、80年代や90年代には50平方メートル台の3LDKといったひどい間取りの物件が出てきました。実際、築年数の長い中古マンションの情報が多数掲載されているポータルサイトなどを見てみてください。そのような極端に狭い3LDKの物件がけっこうあることがわかるはずです。

構造や設備面のグレードダウンの可能性もある

 そのため、不動産会社ではそうした使い勝手の悪い中古マンションを買い取り、3LDKを2LDK、1LDKなどに間取り変更して、「リノベーションマンション」として売り出しているケースが多いのです。もとの50平方メートル台の3LDKのままの間取りでは、誰も見向きもしてくれませんから、それも当然のことでしょう。

 当時は中小の不動産業者だけではなく、わが国を代表するような大手不動産会社でもそんな50平方メートル台の3LDKを平気で売っていました。いまの時代、そこまでひどい間取りをつくると顰蹙を買い、ネットで炎上することになりそうですが、これからはそれに近い物件が出てきてもおかしくないので、十分に注意しておく必要があります。

 いまひとつ、構造や設備面でのグレードダウンにも注意しておきたいところです。さすがに、外観や共用部分などのグレードを落とすと目につきやすいので、見えない部分でのグレードダウンが行われる可能性が高いのです。これが質量の質の面での削減ということになります。

スラブ厚や石膏ボードの厚さなどにも注意

 たとえば、鉄筋コンクリート造の外壁に鉄筋が十分配されているかを確認しましょう。大地震などに備えてコンクリートのなかに二筋の鉄筋を組み込んだダブル配筋が安心ですが、これまでダブル配筋を採用していた分譲会社でも、コストダウンのために鉄筋を一筋だけにしたシングル配筋のマンションを増やしてくる可能性があります。また、上下階を分けるコンクリート壁の厚さを示すスラブ厚も20cm以上はほしいところ。それ以下だと耐震性や耐久性だけではなく、遮音性能にも影響が出てくるので、注意が必要です。階高も3メートル以上ほしいところですが、それ以下の物件が増えてくるでしょう。

 さらに、居室内の間仕切り壁に用いられる石膏ボードの厚さにも注目しておきましょう。遮音性などを考えれば150mmが理想ですが、125mmでもまず問題はありません。しかし、95mmだとトイレや浴室などの音が気になってしまいます。

 こうした点は、モデルルームなどに設置されている設計図書を見ればわかりますが、素人ではなかなか読み取れないので、担当者に確認してみましょう。構造に自信を持っている不動産会社であれば、担当者レベルまで知識が徹底され、スムーズに答えることができるはずです。対応がしどろもどろになるようだと少し心配です。

 価格だけをみて、「随分安くなったじゃないか、これは買い得だ」などと思ってしまうと失敗のもと。内容までシッカリとチェックして、価格に見合った中身になっているかどうかが重要なのです。価格だけにだまされるようなことがないようにしてください。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

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