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米山秀隆「不動産の真実」

マンション、所有者不明等の物件が1割超に…修繕も解体もできない事例増加が現実味

文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員
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マンション、所有者不明等の物件が1割超に…修繕も解体もできない事例増加が現実味の画像1「Gettyimages」より

マンションでも所有者不明物件が増加

 所有者がわからない土地が全国で増え、社会問題化しているが、分譲マンションでもこうした物件が増えつつある。土地と同様、相続未登記や相続放棄が増えていることによる。国土交通省が2016年から17年にかけて管理組合に対して行った調査(「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」、回収数639件)によれば、「連絡先不通または所有者不明」の物件があるマンションは全体の13.6%(87件)存在した。連絡先不通・所有者不明物件のあるマンションの内訳は、築40年以上が29%、築30年以上40年未満が24%と、高経年物件が多くを占めている。

 所有者不明・不在物件が増えることの問題点としては、(1)管理費や修繕積立金が徴収できなくなること、(2)管理が行われないことで劣化が進んだり周囲に悪影響を及ぼしたりすること、(3)多数決による決議が困難になることなどが挙げられる。つまりはマンション管理上の、さまざまな支障を来すということである。(3)については、同じ調査で、今後は建て替え決議などの成立が困難になっていくと考える割合が7割に達している。

財産管理人による処分の可能性

 管理組合は、所有者不明となった場合は不在者財産管理制度、相続放棄された場合は相続財産管理制度によって、物件を処分することができる。管理人選任は、家庭裁判所に申し立てることによって行われるが、その際、数十万~100万円程度の予納金の支払いが必要になる。それでも、物件を売却できれば予納金や管理費滞納分などに充当することができる。

 しかし、そもそも所有者不明・不在となる物件は、価値がないためにそうなってしまった可能性が高く、たとえ売れたとしても予納金や滞納分を賄うのに十分な値段に達しない場合が多いと考えられる。その場合、滞納分は新たな区分所有者が引き継がなければならなくなり、ますます買い手を見つけるのが難しくなる。

 所有者不明・不在となった土地の場合は、市場で価値がなくても、隣の人にとっては敷地拡張のために価値があり、買い取ってもらえる場合がある。マンションの場合も、市場で売れなくとも、従前からの区分所有者に買い増し需要があれば、引き取ってもらえる可能性はある。しかし、建物が老朽化するとともに区分所有者も高齢化しているマンションにおいては、そのような需要はあまり期待できそうにない。

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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