最高裁で逆転判決
なお、このクラブは、ホステスさんのお給料を次のように計算していました。
時給×勤務した時間+同伴手当-欠勤と遅刻の罰金=お給料
クラブは、このお給料から15万円を引いて、源泉徴収税額を算出していました。税務署からは、日数についてだけでなく、欠勤と遅刻の罰金を引いてはいけないとも指摘されます。その理由は、ホステスのような個人事業者は収入から必要経費を控除したのが所得で、源泉徴収においても、お給料から可能な限り実際の必要経費に近似する額を控除することが制度の趣旨に合致する、また、必要経費は出勤日のみ発生するので、5000円を引くのはその月の日数ではなく出勤日とするほうが実際の必要経費に近似するから正しい、というものでした。
クラブにとことん不利な判断です。クラブが途中であきらめていたら、現在一般的になったルールは生まれなかったかもしれません。以下、最高裁の判断を抜粋したうえで、文言をやわらかくしました。
・一般に「期間」とは、ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続性を持った概念である。
・ホステスのお給料から源泉徴収する前に計算期間の日数×5000円を引くルールは、手間を省くためである。
・ホステスの実際の稼働日数ではなく、ひと月まるまる働いたのなら、その月の日数を“計算期間の日数”とするべきである。
つまり、クラブの会計処理を支持したのです。
税務調査で指摘され、納税の告知をされ、不納付加算税を課され、地裁と高裁で負けても、最高裁で認められることもあるのです。そして、それにより、国税庁のホームページの文言が変わって、スタンダードになりました。
税務調査をするのは、税金のプロですが、法の解釈を誤らないとは限らない。税には明るくなくとも、あなたが合理的で論拠のある考え方を持っているのなら、自分が正しいと信じることが大切だと教えてくれる事例です。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)