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ダマされないための「儲けのカラクリ」 第5回

AKB48は日本製造業の継承者と言わざるを得ない理由

文=坂口孝則/未来調達研究所取締役

 メンバー一人ひとりの顧客志向も凄い。指原莉乃さんはファンを楽しませるために、一日でブログを100回も更新して3500万ビューを達成した。他のメンバーもGoogle+では過剰なほどに書き込んでいる。ライブにいけば、彼女たちの一生懸命さに、多くのファンが満足して帰宅する。握手会では手が腫れても頑張り続ける。ファンを差し置いて特定男性と恋愛することは禁止だ。

ケイレツ発注=恋愛禁止

 ちなみに、日本製造業が採用した「ケイレツ発注」とは、ケイレツ企業に自社グループだけへの愛を誓わせるものだった。「恋愛禁止」「グループへの忠誠」「ファンこそ恋人」というAKBは、かつての日本型製造業にそっくりではないか。

 すべてはファンのため。「顧客志向」が貫徹されている。

 お客の声を優先することは、徹底した無思想に支えられている。自分たちの考えではなく、お客こそが正しいとする無思想。少人数のお客にだけ売れるこだわりではなく、多数に売れることこそが正義なのだ。

 「ヒットはすべて正しい」のである。

 その意味で、AKB総選挙は、センターを人気投票だけで選抜する、徹底した、そして優れた無思想システムだった。

 自動車は歴史を経て、単なる移動手段から嗜好品になった。機能を追い求めるだけではダメで、移ろいやすい消費者の心をつかむ必要がある。そして、それは自動車だけではない。他の商品も同じだ。

 かつてのソニーやパナソニックやホンダは、創業者がミカン箱の上に立ち、自社を世界的な企業にしてみせると社員の前でスピーチし、苦労と努力を重ねながら夢を実現させていった、ある種の「物語」をもっている。彼ら創業者(井深大氏・盛田昭夫氏、松下幸之助氏、本田宗一郎氏)は、自社商品以上に有名だ。商品が嗜好品になるにつれ、お客が商品を選ぶ際に重視するのは、この「物語」になっていく。

坂口孝則/未来調達研究所取締役

坂口孝則/未来調達研究所取締役

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。サプライチェーン分野の知識を使い、ものづくり領域の先端解説などを行う。
未来調達研究所

Twitter:@earthcream

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