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西山美紀「貯蓄スキルの高め方」

医療保険を「損か得か」で考えるのはNG?自分に必要かどうかわかる4つの判断基準

文=西山美紀/マネーコラムニスト・ファイナンシャルプランナー
ベッドに座る女性(「gettyimages」より)
「gettyimages」より

 これまで、新型コロナに感染して自宅やホテルで療養(=みなし入院)した場合、医療機関に入院していなくても「入院給付金」が出るケースが多くありました。

 ところが、金融庁からの要請により、9月26日からは多くの保険会社で、みなし入院の入院給付金の対象が「65歳以上の高齢者、入院を必要とする人、重症化リスクがある人、妊娠中の人等」に縮小されることとなりました。

 保険会社によっても対応が異なりますので、詳細は加入中、もしくは加入予定の各保険会社のホームページを見るか、問い合わせをしてみてください。

医療保険に入っていない人は、入るべき?

 今回、新型コロナによって改めて注目された「医療保険」。まだ加入していない人は「やっぱり入った方がいいの?」と思った人もいるでしょう。実は、入るべきかどうかは人によって大きく異なります。

 そこで、確認すべきポイントを4つお伝えします。

1■一般的には、医療費自己負担上限額は月9万円ほど

 まず知っておきたいことが、健康保険適用の医療費の場合は、収入などによって自己負担額の上限額が決められていることです。

「高額療養費制度」といい、健康保険加入者なら誰でも利用できます。

 一般的な年収(約370万円~約770万円)の人なら、どんなに医療費がかかっても、1カ月の自己負担額は9万円ほどで済みます。「長く入院したけれど、思ったよりも医療費がかからなかった」という声を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 とはいえ、年収が高い人は要注意。1カ月の自己負担額は、年収約770万円~約1160万円の人なら18万円ほど、年収1160万円以上なら27万円ほどになります。

 年収が高くても、毎月ほぼ給与を使い切っていて貯蓄がない人の場合は、高額療養費制度があるといっても大きな支出になりますので、貯蓄でしっかり備えるか、医療保険を検討したいところです。

 一般的な年収の人なら、月9万円ほどの自己負担額ですので、大きな備えは不要とも考えられるでしょう。

 また、勤務先によっては「付加給付」といって、さらに上乗せをしてくれる場合もあるので、ぜひ調べてみてください。

2■仕事を長期で休んだ場合に、収入があるか

 また、ケガや病気によって仕事を休んだ場合に「何かしらの収入があるか」もチェックポイントです。

 会社員なら、有給休暇だけでなく、傷病手当金といって、最大1年半までは給料の約3分の2の手当を受け取れる制度があり、安心感があります。

 一方で、自営業やフリーランス、専業主婦(夫)などの場合は、休んでいる間に収入がなくなれば、医療費が多くかかることは負担になります。その場合は、医療保険に入るか、自営業やフリーランスの場合は就業不能保険を検討するのも選択肢です。

3■大きな医療費がかかったときに、貯蓄でまかなえるか

 上記の「高額療養費制度」と「休んだ場合に収入があるか」に加えて、万が一多くの医療費がかかったときに「貯蓄でまかなえるか」も大事なポイントです。

 有給や傷病手当金がない自営業やフリーランスでも、貯蓄がたくさんあって「医療費はいくらでも支払える」ということなら、医療保険は不要でしょう。

 一方で、仕事を休んだ場合に収入が一切なくなり、さらに貯蓄も全然ないということなら、医療保険または就業不能保険を検討したいところです。ただし、高い保険料を支払うと貯蓄ができなくなってしまうので、要注意です。

 医療保険は掛け捨てで、入院日額が5000円~1万円程度のもので、月々の保険料の負担がないものがよいでしょう。最近は入院日数をできるだけ減らす傾向にありますので、入院期間が長く保障されるものでなく、60日程度でもよいと思います。

 たとえば30歳男性なら、掛け捨ての医療保険(入院日額5000円/60日まで)で、保険料が月1000円程度からあります。

「掛け捨てはもったいない」と思うかもしれませんが、超低金利の今は、保険で貯蓄するのは得策とはいえません。保険は安い掛け捨てのものを選び、さらに毎月積み立てで貯蓄すること(例:保険料が月1000円、貯蓄を月5000円~1万円など)で安心と貯蓄、両方を叶えていきましょう。

4■入院した場合、個室に入りたいか

 最後に確認したいことが「個室希望の有無」です。入院した場合「絶対に個室がいい」という人で、貯蓄が少ない人は医療保険を考えるのも選択肢です。

 4人部屋や8人部屋などなら、差額ベッド代がかからないか、安いケースが多いですが、1人部屋の個室となると、1日数万円かかる場合もあります。この金額は入院日数分かかるので、長期入院では大きな負担です。

「個室にどうしても入りたい」という人は、医療保険に入っておけば助けになるでしょう。

保険加入は「損・トク」で考えない

 保険に加入する際に、時々いらっしゃるのが「保険に入るとトク?」という視点で考えることです。

 たとえば、海外旅行に行くイメージをしてみてください。万が一の病気やケガなどに備えて、海外旅行保険に入る人が多いでしょう。その際に「無事に帰ってきたら保険料がもったいないから、やめよう」「保険に入っておけば、盗難に遭ったときにトクだな」などと考えることは、おかしなこと。万が一の際に自分が困ることのないよう、金銭的・精神的なカバーとして入るのが保険ですよね。

 それは、医療保険でも同じです。「保険に加入したらトクになる」「何もなければ保険料が損になる」という感覚ではなく、「万が一の際に、金銭的・精神的なカバーが必要か」という視点で考えましょう。そうすれば、「自分は入るべきかどうか」が自ずとわかるはずです。

西山美紀/マネーコラムニスト・ファイナンシャルプランナー

西山美紀/マネーコラムニスト・ファイナンシャルプランナー

出版社勤務後、2005年に独立し、FP資格を取得。単に貯蓄額を増やすのではなく、うるおいのある毎日のためのお金の使い方・貯め方について発信。Oggi、ミモレ、マリソル、LEE、日経DUALなどの女性誌・WEB等でマネーコラム連載、取材・執筆・監修等。著書に『お金が貯まる「体質」のつくり方』(すばる舎)、『はじめての積立投資・つみたてNISA・iDeCoもよくわかる!お金の増やし方』(主婦の友社)等。

Twitter:@writerN1225

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