日本の所得税は累進課税で、所得が高い人ほど税率が高く設定されている、というのはほとんどの人が知っているだろう。正直に従っていれば、高所得者は多額の税金を払うことになる。
ただ、これはあくまで「名目」の話。実質的な税負担率は私たちが思っているよりずっと低い。というのも、高所得者や資産家の節税の努力はすさまじく、あの手この手を駆使して支払う税金を少なく抑えようとする。
ある意味で「税金のプロ」である彼らと比べると、一般的な会社員は税金について無知に等しい。自分の給料からどのくらいの税金が引かれているのかも知らない人も珍しくない。
都会のサラリーマンは「日本一のお人好し」
平均的なサラリーマンで所得税、住民税でだいたい20%くらいを払っています。また税金と同様に強制徴収される社会保険料がだいたい15%くらいです。それにプラスして物を買う時には10%の消費税がかかるし、酒を飲むときには酒税、車に乗るときにはガソリン税、自動車税などが課せられているのです。(『金持ちに学ぶ税金の逃れ方』P1より)
『金持ちに学ぶ税金の逃れ方』(大村大次郎著、ビジネス社刊)では、都会のサラリーマンを「日本で一番お人好し」だとしている。上記を合算するとだいたい収入の40%から50%を税金として取られていることになるのに、文句を言うこともなく従っているからである。そこに、少しでも税金を低く抑えようという考えはあまりはたらかない。
資産家の実質税負担率は驚くほど低い!
これに対してお金持ちはどうかというと、所得が4000万円以上の人の所得税は45%。住民税の10%と併せると税率は55%にもなる。この税率は先進国でもトップクラスとなる。
ただ、ここには様々な抜け穴がある。その一つが「配当所得」である。株などの配当からの所得は、どんなに高額であっても所得税、住民税を合わせて一律約20%でいいことになっている。
当然、お金持ちや資産家は自分の収入を持ち株の配当に集中させるようになる。大企業の経営者などでは、会社からもらう役員報酬はそれほど高額ではないが、持ち株から莫大な配当収入を得ているケースもある。役員報酬として多額のお金をもらってしまうと高い税率がかかってしまうため、配当報酬という税率の安い方法で受け取っているのである。
こうした収入のもらい方の工夫によって、資産家の実質税負担率は驚くほど低くなることが本書を読むと分かる。所得1億円までは税負担率は上がる一方だが、1億円を超えると急激にその率は下がり、所得が100億円となると実質税負担率は13.5%まで下がるというデータもある。この数字はサラリーマン1年生よりも少ないという。
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税金の仕組みをよく理解して、巧みに税負担を低く抑える資産家と、支払う税金に無自覚なまま毎月納め続けている会社員。「富める者はもっと豊かに、貧しい者はさらに貧しく」という二極化の原因は、もしかしたらこんなところにもあるのかもしれない。
そして、資産家たちが実践している税金を抑えるための工夫の中には、一般的な会社員でも使えるものが多々ある。本書を読めば、自分が納めている税金の多さに驚くと同時に、税の仕組みを理解して、回避できるものは回避しようという気持ちが芽生えてくるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。