伝えたつもりでも、相手にちゃんと伝わっていない。そんな経験はないだろうか。言葉で何かを確実に伝えるということは難しいことだ。面と向かって話せればいいが、メールなどの文書でやりとりする場合、理解の食い違いなどが起きる可能性が高い。
なぜ、そんなことになってしまうのか。その原因は文章の書き方や心構えにあるのかもしれない。
『伝えるための教科書』(川井龍介/著、岩波書店/刊)では、「伝わる」文書の書き方を、シンプルな6つの心得と、身近な9つの場面で紹介する。
■文章は相手のことを考えて書く
テーマや見出しを意識するといった文章の書き方や句読点などの基本的なことはもちろん必要だが、書く前の心構えも大事なことだ。
まず相手のことを考えることである。言葉のやりとりはキャッチボールと同じように、受け取る相手に応じて表現や手段を変える必要がある。しかし、言葉にはさまざまな伝達手段があり、相手が目の前にいるとは限らない。そのため、とくに文書で何かを伝えようとするときには、途中までは読み手のことを考えていたのに、書くのに四苦八苦しているうちに、つい忘れてしまうことがよくあると著者は指摘する。
また、もし文章がすらすらと書けたと思っても、読み直してみると、相手の知りたいことからはずれてしまっていることもありえる。書いている人は一生懸命だが、それによって、受け取る側への意識を忘れ、ひとりよがりの文章になってしまう。こうなると、相手にもうまく伝わらなくなる。
多様多種な読み手に応じて、伝え方、文章の書き方を変えることが求められる。どうしたら相手にとって読みやすく、理解しやすい文章になるかを考え、相手によって工夫することが必要だと著者は訴える。では、どうのようにすれば、相手に応じて文章の書き方を変えることができるのだろうか?
まず、「自分とどういう関係にある人か」という点から考えると、重要なのは相手が目上の人かどうかだ。目上の人には失礼にならないように、例えば敬語を使うという配慮が必要になる。また、知っている人かどうか、というのも基準になるだろう。他にも、相手について考える上での基準には、その人が男性か女性か、年齢はいくつか、職業は何か、どこに住んでいる人なのかなど、客観的な事柄だけでもたくさんある。他にも、忙しそうな人、繊細な人など、相手の性格や置かれている状況なども基準の一つになる。
こうした様々な基準にそって、わかる範囲でどういう人なのかを確認、あるいは想像し、それによって伝え方を変えることが重要なのだ。
本書は岩波ジュニア新書から刊行されており、中学生から高校生ぐらいを対象に書かれているが、文章を書くのが苦手、基本的な書き方をおさらいしたいという社会人が読んでも、十分な内容となっている。
「伝える」だけでなく、「伝わる」文書を作成するには、言葉遣いやテクニックも大事だが、まずは相手のことを思った配慮や工夫が必要なのだろう。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。