お笑いコンビ・爆笑問題が司会を務め、お坊さんの裏側や生態を聞き出していく番組『お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺』(テレビ朝日)が、4月から深夜枠からゴールデンタイムに昇格。話題を呼んでいる。
お坊さんが注目されるのは、どのような生活を送っていて、どんな業界なのかに興味がある、話がうまいというのもあるが、生きること、死ぬことに近いところにいる人の考え方を知りたいというのもあるのではないだろうか。
生と死。幸せとは何か。生きる意味は何か。堂々巡りで決して決まった正解や答えがあるわけではないが、考えてしまうものだろう。では、日本人の生死や幸せに対する考え方は、ドイツ人であり、元キリスト教徒、現在は曹洞宗の住職から見ると、どう見えているのだろうか。
『なぜ日本人はご先祖様に祈るのか』(ネルケ無方/著、幻冬舎/刊)では、元キリスト教徒のドイツ人禅僧・ネルケ無方氏が、日本と欧米社会を中心に比較しながら、曖昧な日本人の死生観と理想の死について考察し、死に対する考え方を紹介する。
幸せについてのアンケート調査の統計は、ブータンやバングラデシュ、スウェーデンといった国の幸せ度が高いなど、さまざまな結果が出ている。なかでも、日本は先進国のうち最下位で、「幸せでない国」としてよく取り上げられている。
ネルケ無方氏は、もし、私が幸せかどうか聞かれたら、何と比較して幸せなのか、幸せ・不幸せの基準がわからないから答えに困ってしまう。でも、強いていうならば日本人は幸せだと思うと語る。
日本人は、バブル崩壊後を「失われた20年」と呼び、高度経済成長の時代の日本を取り戻したいと思っているのではないか。これに対し、ネルケ無方氏は、今の日本でいいと述べる。なぜなら、経済成長がすべてではないから。日本人はあと一歩でナンバー1というところまで行けたけれど、経済成長がすべてではなかったということに気づいた。それが日本人のいいところなのだというのだ。
今、過去を振り返って「何だったのだろう」と考える余裕があるのは非常にいいことだ。多くの国はまったく、その余裕がない。なぜかというと、日本のような熟成社会に追いついていない。日本人は、自分たちを幸せな国民だと思っていない人が多い。それでも、今の日本人は幸せだというのがネルケ無方氏の考えだ。
人間誰でも、いつかは死が訪れる。最近では、自分の死をどのように締めくくるか「終活」に勤しむ人も増えている。就活、婚活、妊活、終活と、何事にもがんばる日本人は、死を迎えるときまでがんばりすぎる。そんな日本人に「心配しなくても、死ぬときがきたら死ぬから大丈夫だよ」とネルケ無方氏は言ってあげたいと語る。
日本だけではなく、欧米と日本の死生観の違いや世界の宗教は死をどのように考えているのか。そういったことを知ると、日本人の死に対する考え方や幸せについて、何か見えてくるのかもしれない。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。