社会人として働きはじめてしばらく経ち、中堅といわれる年齢に入ってきた。気づけば役職がついて、何人かの部下も抱えている。
これからは、部下の数も、やりとりする外部の人の数も段違いに増えてくる。そうなったとき、まわりから「この人のためなら」と思ってもらえるかによって、その後の歩みは大きく変わってくる。つまり、ポジションが上がるほどに問われるのが「器」なのだ。
自分のスケールを大きくするために、具体的には何を意識すればよいのか? 『「人間的魅力」のつくり方』(川北義則/著、三笠書房/刊)からご紹介しよう。
■言葉に対する感性を磨く
川北さんはこんな言葉を引用している。「布地は染め具合で、酒は香りで、花は匂いで、人は言葉遣いで判断される」(フランスの詩人 ポール・ヴァレリー)。
たしかに同じひとりの人間でも、言葉遣いひとつでその評価は良いものにも悪いものにもなる。政治家が失言によって失脚することを考えれば、言葉がその人の人生を変えるといっても過言ではないだろう。
そこで「言葉遣いがキレイな人の真似をする」ことが重要になるわけだが、どのように真似すればよいのだろうか? 川北さんは「見よう見まね」が最高の学び方だと述べている。逆に「要点だけ取り入れて、あとは自分なりに」というのはダメな学び方なのだそうだ。
赤ん坊が言葉を覚えるのと同じように、自分の身近なところにお手本を見つけ、全身で「キレイな言葉遣い」を学び、言葉に対する感性を磨く。このような努力を重ねることで、いつしかその人の器は大きくなっていくのだ。
■ユーモアを身につける
日本人が国際舞台で活躍できないひとつの理由がユーモアの欠如。社交の場において、ユーモアは礼儀作法に匹敵するほど重要であると川北さんは指摘する。
2009年当時、首相だった麻生太郎さんが国連総会での演説中、マイクの調子が悪くなり中断を余儀なくされたことがあった。そして、マイクが直り演説を再開したとき、麻生さんは「まさか、このマイク、日本製じゃないだろうな」と発言し、会場の笑いを誘った。この一件もあって、麻生さんの国際的評価は高い。
日本ではユーモアやジョークというと、どこか「ついでに付けるもの」という感覚が強い。しかし西洋では、外交の場において、話の本筋に匹敵するほどユーモアやジョークが重要視されている。イギリスの場合、エリート層の必要絶対条件として、ユーモアが第一に挙げられるほど。
グローバルに活躍したいのなら、ユーモアを身につけることは必須なのだ。
■引き際を意識する
男の器が如実に現れるのが「引き際」だ。引き際が見事な男はかっこいい。
引き際をうまく使えば、それまでのマイナス評価も帳消しにできるし、下手をすればそれまでの功績を台無しにもしてしまう。引き際はそれほどの威力を持っている。
余力を持った状態で潔く引退するのが理想的な引き際だろう。一昔前でいえば巨人軍の長嶋茂雄さん、最近でいえば小泉純一郎さんが、見事な引き際を飾った人物として思い浮かぶ。後から「あの人は引き際が見事だったね」といわれるためにも、日頃から「自分はどのように幕を引きたいのか」を意識しておきたいものだ。