会社を継続・発展させるために、人材育成の重要性を否定する人はいないはずだ。
必要な時に必要なスキルを持った人材を社外から調達することが容易になった現代でも、会社の次世代を担う基幹となる人材までアウトソースで済ますわけにはいかないだろう。
医療機器である血管カテーテルの専門メーカー、メディキット株式会社は、求める人物像として「風を起こす人材」を挙げ、次世代を担うスタッフの育成に力を入れている。注目すべきは、創業以来40年以上にわたって安定成長を続けるという明らかな成果に同社の人材育成が結びついていることだ。
では、同社が求める「風を起こす人材」とはどのような人物なのか。それを知ることは、他社にとっても人材育成のヒントになるだろう。
■安定成長の決め手「風を起こす人材」とは
同社の創業者・中島弘明氏の著書『風を起こす社員の鍛え方―――「諦めない勇気、やりきる信念」を育てる』(ダイヤモンド社/刊)を読むと「風を起こす人材」とはどのような人物を指すのかが見えてくる。その特性のひとつとして挙げられるのは「決して努力を絶やさないこと」だ。
これは中島氏自身の経験が背景になっている。メディキットの屋台骨となった商品に「ハッピーキャス」という一体成型留置針がある。これはフッ素樹脂でできているために金属アレルギーや血管損傷のリスクが少ない針で、開発を決めた1970年当時からすると、技術的にも資金的にもとても実現できそうにない夢の製品だったという。
開発を始めた当初はもちろん、中島氏自身も暗中模索の状態だった。アメリカに5回わたり、あらゆる方面から技術や器具を調達することから始め、日中に営業をこなしながら、夜の時間を使って、開発に没頭した。資金が足りなくなると妻の貯金にまで手を出して試行錯誤を重ね、目指していた最初の1本がついにできたときには、実に7年もの歳月が経過していたという。
やると決めたら、絶対にあきらめずに努力を続ける。誰に何といわれようとできるまで続ける。中島氏に始まるこの精神が、同社には脈々と受け継がれているのだ。
もう一つ、「現状に満足しない」ことも「風を起こす人材」の特性である。
これは、未来をよりよいものにするために常に力を尽くすということ。中島氏は、過去の失敗や終わったことの結末を見て原因を分析するより、どうすれば次に挽回できるかを考える方が建設的だとしている。
常に会社として成長していくためには、社員一人一人の成長が不可欠だ。日々少しずつでも自分を前進させようという姿勢が、メディキットでは求められているのだ。
中島氏は「風を起こす人材」になるためには、「自らが自分を育てる」ことが大切としつつも、同時に組織側の働き掛けも不可欠だとしている。
本書ではその具体的な取り組みや指導にも話が及ぶ。安定成長を続ける企業の強みが垣間見える中島氏の力強い言葉は、人材育成に悩む企業や経営者への確かなヒントとなるはずだ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。